研究課題/領域番号 |
21K06297
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
光永 貴之 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 植物防疫研究部門, 上級研究員 (50569506)
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研究分担者 |
長坂 幸吉 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 植物防疫研究部門, 研究領域長 (50355137)
村上 理都子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 植物防疫研究部門, 上級研究員 (10414947)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アブラバチ / 性配分戦略 / アブラムシ / 意思決定要因 / 進化生態学 |
研究実績の概要 |
1) 5種類のアブラムシ種(ワタアブラムシ、モモアカアブラムシ、ジャガイモヒゲナガアブラムシ、トウモロコシアブラムシ、マメアブラムシ)の1齢幼虫から成虫までの各齢期について体サイズを測定した。また、これらのアブラムシ5種の各齢期を寄主としてナケルクロアブラバチを寄生させ、次世代虫の性比を測定した。これらの結果を元にして、寄主アブラムシの体サイズを説明変数としたナケルクロアブラバチの次世代性比を予測するロジスティック回帰モデルを作成した。その結果、モデルにアブラムシ種をカテゴリー変数として組み込んだ場合とそうでない場合とで予測精度はあまり変化しないことが示唆された。このことから、ナケルクロアブラバチの次世代性比はアブラムシ種固有の情報を使っていないことが予想された。 2) アブラムシ類の硬さを測定するために、当初予定していた針入度試験器を試したところ、値は出るものの誤差範囲が大きく、本研究に用いるには不適当であることが判明した。そこで、これに代わる測定器としてテクスチャーアナライザーを選定した。予備試験の結果、本試験器の測定精度は十分であることが判明した一方で、本来の用途とは異なるために、試験器の構造について多くの調整が必要であることが判った。特に測定針の虫体貫通後に底面に針先が着くために生じる針の曲がりという不具合を解決すること、アブラムシの虫体が微小であることから拡大して観察するための実体顕微鏡を試験器と連動させるシステムの構築が必要であった。現在、機器メーカーとともにこれらの問題を修正・解決する調整を行なっている。 3) 寄主アブラムシ体内に寄生するアブラバチの種同定を可能とする精度の高いDNA解析手法を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画時に利用予定であった針入度試験器では、アブラムシ類の表皮の硬さを測定すると値は出るものの測定誤差が大きすぎることが判明したため、新たに測定器を選定する必要が生じた。その結果、テクスチャーアナライザーならば有効な誤差範囲内で測定可能であることが判明したが、コロナ禍等により物流が大きく乱れており、部品の調達など本器の整備に予定よりも時間がかかったため、令和3年度内にアブラムシ類の硬さを測定することができなかった。 この実験の遅れは、現在令和4年6月にテクスチャーアナライザーが稼働できる予定であるために、本年度中に挽回できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
1) アブラムシ類5種の表皮の硬さをテクスチャーアナライザーを用いて各齢期ごとに測定する。 2) R3年度に入手したアブラムシの体サイズおよび次世代性比のデータに新たに測定した体表面の硬さのデータを加えて、ロジスティック回帰モデルを構築し、硬さと体サイズのどちらが説明力が高いかを残差逸脱度等の比較を行うことにより検証する。 3) 体表面にシリコン系展着剤を塗布することにより、体表面の硬さを調整したアブラムシを作成し、それに対してナケルクロアブラバチを寄生させて次世代虫の性比を測定する。得られたデータを用いて、2)で作成した体サイズモデルと硬さモデルを比較して、どちらのモデルがより説明力が高いかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
R3年度購入予定の測定器がコロナ禍による物流の乱れ等によりR4年度にずれ込んだため。R4年度に測定器を購入するためこの差額は解消される見込み。
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