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2023 年度 実施状況報告書

深海底生性魚類の種多様性評価:コスモポリタンは真実か?

研究課題

研究課題/領域番号 21K06300
研究機関北海道大学

研究代表者

田城 文人  北海道大学, 総合博物館, 助教 (70737478)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワード生物多様性 / 分類学 / 広域分布 / 深海性魚類 / 形態学 / 分子系統学 / 生物地理 / ウナギ目
研究実績の概要

1.水深3,000 m付近に生息することで新規標本の入手目処がついていなかったソコアナゴ属ソコアナゴHistiobranchus bathybiusについて,研究協力者からの提供により日本産2個体の生鮮サンプルを入手することができた.これにより日本産既知全種のホラアナゴ科の遺伝(2種は隣接する台湾産個体のみ)・形態解析の実施に至り,1未記載種・1日本未記録種を含む計8属14種のホラアナゴ科魚類を認めた.これら14種は形態特徴に基づき容易に識別可能であり,本課題の達成目標の一つである『日本産本科魚類の確実な種の認識』が現時点で達成されたと判断される.
2.遺伝解析に基づきイラコアナゴSynaphobranchus kaupiiを全世界レベルで調査した結果,少なくとも日本産個体群はS. kaupiiのタイプ産地(北大西洋)の個体群とは異なる種であることが強く示唆された.そこで,日本産個体群に該当する学名の決定を目的として,候補となる名義種のタイプ標本の観察に着手した.
3.本科で最も種多様性が高いアサバホラアナゴ属について,一部の種のタイプ標本を観察したところ,原記載に重大な誤りがある種が複数見出された.それらは日本および周辺海域に分布する種ではないものの,帰属に誤りのある種も含まれる.属レベルの分類への影響に加え,属間での種多様性比較に影響を及ぼす可能性もあるため,それらの分類学的精査に着手した.
4.本課題主対象となるホラアナゴ科への補強を目的として,アナゴ科ギンアナゴ属を調査した結果,ギンアナゴGnathophis heterognathosで遺伝的変異を伴わない形態の地理的変異を認めた.この事象の要因として,変態・着底後に生活する海域の海洋環境に影響を受けて形態変異が生じることが示唆された.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

2022年度末に勤務施設の建て替えが決定し,2023年度はその計画と移転準備に多大な労力を注ぎ込むことになった.これにより,予定していた研究計画に大幅な遅れが生じた.さらに,新型コロナウイルスの影響が上半期も継続したことに加え,ウクライナ-ロシア間紛争の影響(タイプ標本等の観察のためにロシアの博物館訪問を計画)もあり,2023年度の海外渡航は全て延期せざるを得なかった.

今後の研究の推進方策

2024年度はウクライナ-ロシア間紛争の継続に加え,新たに急激な円高の影響が見込まれている.これにより当初計画していた海外渡航計画は大幅な見直しが求められる.海外渡航は主にタイプ標本観察を目的として計画していたため,一部の種は学名の決定に至らない可能性がある.一方,本課題の計画時も新型コロナウイルスの影響が先読みできない状況であったため,学名の決定は必須項目とはせず,暫定名も含めた柔軟な対応を取ることとしていた.今後は優先順位を設定して渡航先を決定する.なお,現時点では日本産イラコアナゴSynaphobranchus kaupiiの学名変更が示唆されており,本種はわが国で水産対象として漁獲・利用されている.以上から,イラコアナゴの学名決定は最重要事項に置いて取り組む.
2023年度までの成果によって日本産ホラアナゴ科の確実な種の認識が可能となった.今後は各種の分布特性の解明に向けた取り組みを本格的に推進する.

次年度使用額が生じた理由

予定していた海外(及び一部国内)出張が未遂行となったことに起因する.次年度に延期した出張旅費として使用する.

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] 茨城県沖で採集された日本初記録のウミヘビ科魚類Ophichthus longicorpusアズキウミヘビ(新称)2023

    • 著者名/発表者名
      古庄 誠・森川英祐・三澤 遼・田城文人
    • 雑誌名

      魚類学雑誌

      巻: 70 ページ: 187~192

    • DOI

      10.11369/jji.23-019

    • 査読あり
  • [学会発表] 遺伝・形態データに基づく日本産ホラアナゴ属魚類の分類2023

    • 著者名/発表者名
      田城文人・髙見宗広・三澤 遼・成松庸二
    • 学会等名
      2023年度日本魚類学会年会
  • [学会発表] 日本産ギンアナゴGnathophis heterognathosは1種なのか?2023

    • 著者名/発表者名
      園山萌香・田城文人・今村 央
    • 学会等名
      2023年度日本魚類学会年会

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公開日: 2024-12-25  

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