研究課題/領域番号 |
21K06302
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研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
島田 知彦 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (30610638)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 越冬幼生 / 生活史特性 / 地域集団の分化 / 発生段階 / 性比 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ツチガエルのNorth系統(日本海側)とCentral系統(太平洋側)との幼生期における温度特性の違いに着目し、越冬幼生をめぐる生活史戦略の地域差を解明することにある。当該年度は、太平洋側、日本海側の両方で得られた越冬幼生について、愛知県内に設置した野外飼育槽を用いて厳冬期から変態まで飼育し、先行研究で報告された性比の偏り(日本海側では雌が、太平洋側では雄が先に産まれる)と、低温時における成長パターンの違い(日本海側では、太平洋側に比べて低温時でもよく成長する)について検証した。具体的には、前年度の12月~1月に両地域で3地点ずつから収集した多数の越冬幼生について、野外飼育水槽で個別飼育しながら、月1回、体サイズと発生段階を記録するとともに、変態日と変態サイズも記録し、変態個体の剖検から性判別も行った。 実験は滞りなく進行し、解析に足るだけのデータが得られたが、先行研究から期待される性比の偏りや、性間の発生程度の差は認められなかった。先行研究で報告されている卵の性比の偏りは、たとえ存在するにしても、越冬幼生期には不明瞭になってしまい、個体群構造に影響を及ぼすほどのものにはなっていない可能性が高い。 また、幼生の低温時における成長パターンに関しても、先行研究から期待されるような地域間の差は認められなかった。ただ当該シーズンは、2,3月が例年よりかなり高温であり、日によっては4,5月に相当するような気温に達するケースも多かった。このため実験の目的であった低温状態が長く継続するような環境を作り出せず、地域間差をうまく検出できなかった可能性が考えられる。本研究で注目している地域間の成長パターンの差は、恒温実験下では明瞭に検出できているため、これが野外でどのように機能しているのか明らかにしたいと考えており、実験手法を変えたアプローチを検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度は越冬幼生の成長を追跡し、地域間の差や性比を詳細に調べることを目的としており、その実験目的自体は達せられ、十分なデータが得られた。これは本来は当該年度の前年度に予定していた実験であったが、実験装置の完成度が低く、所定の成果が得られなかったものであり、その意味では研究自体は予定より遅れたものの、一定の成果は挙げられている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は、ツチガエルのNorth系統(日本海側)とCentral系統(太平洋側)の間に、幼生期の成長パターンの違いが存在することを前提として進めているが、恒温飼育条件下では明瞭に検出されている地域間差が、外気温条件下で再現できないことがネックとなっている。ただ、外気温条件は、年ごとの気候変動の影響を受けやすく、実験条件を整えることが難しいことがわかったため、飼育条件下で温度条件を変動させる実験系を準備中であり、今年度はいくつかの実験系について並列的に取組む予定で準備をしている。
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次年度使用額が生じた理由 |
バイアウト制度を利用して一部の予算を執行する予定で、20万円の前倒し使用を行ったが、雇用予定であった方の事情で当該年度の雇用ができなかった。2024年度には雇用が成立し、既に学内手続きも終えているため、そちらで使用する予定である。
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