研究課題
トサカメオトランは国内ではこれまで琉球列島でしか分布が知られていなかった。しかし、2009年に小笠原の無人島向島で発見され、その後母島でも生育が確認されており、ごく最近小笠原諸島へ分布が拡大したと考えられている。ラン科植物の種子は、微細で長距離の飛散が可能である反面、貯蔵養分を蓄えておらず、発芽時に特定の共生菌類から栄養供給を受ける必要がある。また、共生菌からの栄養供給は成熟後も継続する。必要な菌の種類や数は、ランの種によって様々であり、また、発芽時と成熟時で共生する菌類相が変化するケースも知られている。そこで本研究では、小笠原の海洋島へ定着する際にどのような菌類が関与していたかを明らかにするため、小笠原に自生する成熟個体の根を採取し、DNA分析によって共生菌の種類を特定した。また、自生地播種試験法を用いて自生地での種子発芽に関わっている共生菌を明らかにするとともに、シャーレ内で種子と菌を共生培養し、in vitro下で発芽に関与する菌種を特定した。さらに、小笠原へ移入した際に、現地でこれまで共生してこなかった新たな菌をリクルートして定着したのか、あるいはこれまで他の分布地で共生していた同類の菌が小笠原にも存在していたのかを明らかにするため、比較対象として琉球列島の個体群についても同様の調査を行い、小笠原の菌相と比較した。その結果、琉球列島と小笠原間で共通の共生菌が存在し、分子系統解析によりこれらの菌類は広域分布種であることが明らかとなり、後者の仮説を支持するものであった。小笠原と同様に海洋島へ進出したメカニズムを解明するため、本種が分布するグアム島でも同調査を進めている。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
Plant Species Biology
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