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2023 年度 実施状況報告書

深海底生命圏における未知原始ウイルス群:その実態と初期進化プロセスの解明

研究課題

研究課題/領域番号 21K06312
研究機関国立研究開発法人海洋研究開発機構

研究代表者

吉田 光宏  国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋機能利用部門(生命理工学センター), 准研究員 (60565555)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワード深海 / 海底下 / 堆積物 / ウイルス / メタゲノミクス / 微生物
研究実績の概要

近年、海洋環境に存在するウイルスは、宿主である微生物への感染を経て、それらの群集組成に顕著な変化や多様性を付与する事例、また、海洋の炭素循環にも寄与することが報告されており、海洋ウイルスの生態学的重要性について、これまで精力的に研究が行われてきた。しかしながら、生命誕生の場とされる深海底生命圏におけるウイルスの知見は極めて少ないのが現状である。そこで本研究では、一本鎖DNAやRNAタイプの未知原始系統群をも標的とする分子生態学的ウイルス群集解析手法を用いて、深海底ウイルスの群集構造や多様性などに関する生態学的知見の収集を目的としている。
海底下深部堆積層における計12種(海底下0.9~363m)の堆積物試料について、ウイルス画分を回収し、この画分からウイルスのゲノムDNAの抽出を行った。次に、各試料に対して、現場の全DNAウイルス群集メタゲノムを標的とする網羅的配列決定解析を行った。取得したウイルスメタゲノムの配列をもとに、ウイルスゲノム(vMAG)を構築し、Blast相同性検索を行った。その結果、二本鎖DNAウイルス由来のvMAGだけでなく、海底堆積物環境で優占する一本鎖DNAウイルスに由来するvMAGも得られていることが分かった。さらにCRISPR配列を用いた宿主推定解析を行い、深海底特有のAsgard古細菌に潜在的に感染するウイルス由来のvMAGの取得に成功した。また、これまでに報告例のない本菌群感染性ウイルス由来のvMAGも新たに複数見出した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

バイオマスがごく微量であることが想定される海底下深部堆積層に由来するたいていの試料から、ウイルスの完全ゲノムを構築することに成功した。さらに、Asgard古細菌に感染するウイルスゲノムを含む、新規ウイルスゲノムがこの環境において豊富に存在することを見出した。こうした知見の取得を踏まえ、当初の計画どおり研究を遂行できたと判断した。

今後の研究の推進方策

いくつかの試料において、構築されたウイルス完全ゲノムの数が非常に少なかったため、今後、ゲノムの構築・回収作業を精力的に進めるとともに、発見した新規ウイルスが保有する特異な代謝関連遺伝子や有用遺伝子を探索し、これらの特徴付けを試みる。

次年度使用額が生じた理由

次世代シーケンサーによる一連の環境メタゲノム配列の決定において、当初の想定よりも少ない解析実行数で行えたため、これにかかる研究試薬等の物品費用が抑えられ、その結果、執行残が生じた。この持ち越した分については、今後、配列の収量が比較的少なかった試料における配列決定量を増やすなど、これにかかる必要試薬等の追加物品の費用に充てる予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2023

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] 二本鎖RNAシーケンス手法FLDSによる海洋RNAウイルス群集ゲノムの解析2023

    • 著者名/発表者名
      吉田 光宏, 高木 善弘, 浦山 俊一, 西村 陽介, 布浦 拓郎
    • 学会等名
      第36回日本微生物生態学会
  • [学会発表] 化学合成独立栄養細菌 Nitratiruptor に感染する一本鎖 DNA ウイルスの性状解析2023

    • 著者名/発表者名
      吉田(高島) ゆかり, 吉田 光宏, 高木 善弘, 布浦 拓郎, 高井 研
    • 学会等名
      第36回日本微生物生態学会

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公開日: 2024-12-25  

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