研究課題/領域番号 |
21K06314
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
小藤 累美子 金沢大学, 生命理工学系, 助教 (40324066)
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研究分担者 |
嶋村 正樹 広島大学, 統合生命科学研究科(理), 准教授 (00432708)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ツノゴケ / 葉状体 / 幹細胞 / 形態 / 系統 / 分類 / 陸上植物 |
研究実績の概要 |
本研究では、最近の研究から陸上植物の最基部分岐した二大系統の一つであるコケ植物の基部に位置することがわかったツノゴケ類に焦点を当て、ツノゴケ類の形態とその発生過程を明らかにした上で、ツノゴケ類における普遍的な形質と多様な形質およびその進化過程を推定する。ツノゴケ類は陸上植物の高次分類群の中で最小のグループであるが、発生過程を通じた形態の比較研究が少なく、また日本産ツノゴケ類には学名との対応が未解明のものがある。そこで初年度は、以下の2点に着目して研究を行なった。
1.ツノゴケ類の調査と採集:実験系統が属するツノゴケ属について国内の自生地の調査を行い、ホウライツノゴケの採取および広島県内でのコツノゴケの自生を確認した。またAnthoceros punctatusなのかA. agrestisなのか決着のついていない日本産ツノゴケに関して分子系統解析を行い、これまでA. agrestisと考えられていた沖縄の植物は恐らく別種であることがわかった。
2. 実験系統を用いた形態観察:ツノゴケ類の実験系統であるAnthoceros agrestis Oxford系統について、実験条件下で胞子発芽から葉状体の形成過程および幹細胞動態の観察、および葉状体の切除実験後の幹細胞再生の観察を行った。その結果、ツノゴケ類に特徴的な粘液孔は頂端幹細胞形成と関連している可能性があること、健康な葉状体における頂端幹細胞の増加は発生のごく初期を除き分岐によることが明らかになった。また葉状体の切除実験から、頂端幹細胞を持つ組織片からは頂端幹細胞の新生が見られないこと、頂端幹細胞の新生に先立ち数百細胞程度の細胞塊が形成されることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナの影響により、カナダで栽培されて いるツノゴケ類の最基部で分岐したLeiosporocerosの入手ができず、またライブイメージングにより幹細胞動態を観察するための構成的発現プロモーター下で細胞膜局在シグナルを融合させた蛍光タンパク質を発現する株のイギリスからの入手も作出もできなかった。また国内でも県外との往来が制限されたことにより、調査や共同研究の実施に支障が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
国内各地および海外との往来が再開されたことから、材料の入手を優先して行い、得られたものについて培養と形態観察を行う。さらに、今年度確立したライブイメージング用の培養系を用いて、実験系統を用いての幹細胞動態の解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの影響で国内外の移動が制限されたため旅費の使用が少なかった。その結果材料の入手が遅れ、それらの材料を用いた解析が次年度以降となった。今後の状況を見て次年度以降に使用する。
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