研究課題/領域番号 |
21K06317
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
岡崎 純子 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (20195332)
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研究分担者 |
長谷川 匡弘 地方独立行政法人大阪市博物館機構(大阪市立美術館、大阪市立自然史博物館、大阪市立東洋陶磁美術館、大阪, 大阪市立自然史博物館, 主任学芸員 (80610542)
阿部 晴恵 新潟大学, 佐渡自然共生科学センター, 准教授 (60462272)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ポリネーターシフト / 島嶼生物学 / 蜜分泌 / 種分化 |
研究実績の概要 |
日本列島に広く分布し普通種とされてきたが訪花昆虫の利用が本土と比較的近いながら海洋島であるという特性を持つ伊豆諸島で利用する訪花昆虫相が夜間から昼閒昆虫へシフトし形態に分化がみられるという,離島での送粉生態型分化の材料として有用であるキキョウ科ツリガネニンジン類を用いて島嶼での訪花昆虫相のシフトに適応した蜜分泌の繁殖特性ががどのように分化しているのか,伊豆諸島でのこの興味深い訪花昆虫シフトが侵入定着過程の事後事前のどこで生じたのか,伊豆諸島で見られた現象が他の地史的歴史が異なる離島環境(海洋島や大陸島)でもみられる一般的な現象なのかを解明・検証するため令和5年度は古い大陸島である隠岐の島の島後島海岸集団と本土側島根県浜田市の海岸集団を調査地としてこの両者で送粉型分化と蜜分泌特性の分化がみられるのかの解明に取り組んだ。 令和5年8月下旬に標本情報を元に隠岐の島の島後島海岸集団でツリガネニンジン類の分布と開花状況調査を行った。残念ながら令和5年の8月は通常と異なる高温と渇水が続き生育個体のほとんどが開花終了後結実せず枯れているのが観察された。そのため残っていた個体のDNAサンプルの採取は行えたが訪花昆虫相調査および蜜分泌特性調査は断念し,翌年度に延期することになった。 一方,対応する本土集団である島根県浜田市集団での調査からは訪花昆虫として他の本土集団同様夜行性の蛾類が有効な訪花昆虫となっていて,蜜分泌は昼間は分泌せず夕方から夜間にかけて分泌されており,有効な訪花昆虫との対応がみられることが明らかになった。糖濃度と糖組成はこれまで調査してきた伊豆諸島集団や佐渡集団それらの対応本土集団と大きな違いはなく、それらと有意な差は認められなかった。隠岐の島集団、浜田市集団のDNA解析は現在解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実績の概要で述べたように令和5年度は古い大陸島である隠岐の島と本土での送粉生態型分化の有無を検証する予定であったが令和5年の夏が異常気象で高温が続き,また少雨であったため,ツリガネニンジン類個体の開花の調査に適切な開花時期が予想より数週間以上早く調査に訪れた頃には地上部が枯れた個体が集団のほとんどを占めた。そのため隠岐の島での訪花昆虫相調査を延期せざるを得なかった。それ故,令和5年度に予定していたデータを十分にとることができず研究に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度には(1)古い大陸島としての隠岐の島と本土間での送粉生態型分化の有無の解析と蜜分析の比較調査(2)定着過程特定のための次世代シーケンス分析を行う。(1)については令和5年に達成できなかった隠岐の島集団での訪花昆虫相調査,蜜分泌特性の調査および蜜採集を行う。採集した蜜は研究室に持ち帰りHPLC分析により糖成分,糖濃度の分析を行い,島根県の本土側である浜田市海岸集団の結果との比較を行う。(2)については今まで採集してきた集団サンプルと他の地域のサンプルを含め次世代シーケンスにかけてSNP解析を実施し,日本列島での本植物の島嶼侵入定着過程の推定を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和5年度に予定していた隠岐の島での野外調査が8月の気候が高温乾燥が続いたために調査を予定していた時期よりも早くほとんどの個体の開花が終了していることが予備調査で判明した。そのため令和5年度に行う予定の調査を延期したためその旅費が残ったものである。この調査は令和6年に実施し残額はその旅費に使用する予定である。
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