研究課題/領域番号 |
21K06322
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研究機関 | 石巻専修大学 |
研究代表者 |
根本 智行 石巻専修大学, 理工学部, 教授 (50228293)
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研究分担者 |
松尾 歩 東北大学, 農学研究科, 助教 (90868754)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | マメ科 / ハギ属 / MIG-seq解析 |
研究実績の概要 |
令和3年度は、まず、研究代表者が9月7日-15日にミヤギノハギ(広義)および近縁種の集団の試料および標本の収集を目的に、まだ試料が全く入手できていない九州の福岡県、佐賀県、熊本県、鹿児島県で現地調査を行った。また、ミヤギノハギ(広義)の亜種であるケハギについても、試料採取地を拡大するため、9月23日-25日に新潟県北部で調査を行った。これらの調査で収集した約160個体の全DNAを抽出した後、共同研究者がMIG-seq解析を行った。また、過年度までに入手、解析を行っていた東北・北陸・東海・近畿・中国地方の試料の結果と併せて系統解析を行い、以下のことが判明した。 (1)ハギ属のヤマハギ亜属のうち開放花のみをつけるヤマハギ節と開放花および閉鎖花をつけるシベリアメドハギ節はそれぞれ別の系統群に分離した。また、ヤマハギ節、シベリアメドハギ節に属する各種はおおむね系統的なまとまりを示した。 (2)本研究で特に注目するヤマハギ節のミヤギノハギ(広義)では、亜種であるタイワンハギ、ケハギ、ミヤギノハギ、ビッチュウヤマハギが系統的なまとまりを示した。しかしその一方で、これらの系統群間でネットワークを形成して結びつく複雑な遺伝的特性をもつ個体が多数みられることもわかった。さらに、タイワンハギについては、ミヤギノハギ(広義)以外の種との系統的な関連が示唆された。 (3)国内で自然分布と考えられない地域に生育するビッチュウヤマハギ集団については、多くで本来の分布域(近畿・中国・九州地方)の集団と近縁であることが確認されたが、ごく一部に国内のどの個体とも系統的に異なる個体が見つかった。これらの個体は、中国などの国外から導入された可能性が考えられる。また、国内に導入されたと推測されるタイワンハギ集団については、台湾の自生個体との系統的な関連が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度に予定していた調査および試料・標本の入手は概ね達成できた。また、入手した試料のMIG-seq解析も達成できた。しかし、ハギ属の花期(9月以降)に合わせて試料・標本の収集を行っているため、その後のDNA抽出とMIG-seq解析が年度後半にずれ込み、解析結果が得られたのが年度末になってしまった。このため、得られた系統樹と標本を用いた形態との照合や比較検討を年度内に終わらせることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
試料・標本を全く入手できていない四国地方の他に、まだ試料の少ない鹿児島県、新潟県北部・山形県、富山・石川・福井県、山口県・島根県・鳥取県で現地調査を行い、試料・標本を追加し、MIG-seq解析を進める。また、標本館の標本を用いたMIG-seq解析の可能性を探るため、手元にある標本を用いた予備的な解析を行う。この結果を踏まえ、下記のような標本館の収蔵標本の活用も試みる。 「研究実施計画」では、当初、夏期休暇間を利用して中国科学院植物研究所(北京)の植物標本館を訪問し標本調査を行う予定であった。しかし、新型コロナウィルスの感染予防のための手続きが煩雑で余分な時間と経費がかさむこと、導入されたと推定される個体がまだ少ないことを鑑み、訪問を中止することにした。代わりに、中国産の試料の入手について、標本館の標本からの試料の採取と野外からの収集依頼の可能性を、中国科学院植物研究所(北京)の朱相雲教授と相談する。国内の主要な標本館に収蔵されている中国産標本の有無を調べ、試料の提供を依頼する。 形態形質の解析では、前年度に遅れていた、得られた系統樹と標本との照合や系統樹の解釈に資する形態の比較検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究ではDNA抽出キットを使用するが、過年度に購入した買い置きが余分にあったため、約1キット分の予算が残った。次年度の消耗品購入費として使用予定である。
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