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2023 年度 実績報告書

同一の遺伝子が異なる環境への適応を可能にするのか?:渓流沿いと蛇紋岩地を例に

研究課題

研究課題/領域番号 21K06324
研究機関東京都市大学

研究代表者

福田 達哉  東京都市大学, 理工学部, 教授 (00432815)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード環境適応
研究実績の概要

河川の水流ストレスに対して植物は、葉身を細くすることによりストレスを低減させていることが知られていたものの、それだけでは地上部全体のストレス低減には繋がらない。そこで葉身と茎を繋ぐ葉柄に関して、河川沿い植物のストレス低減戦略が認められるか否かを明らかにするために力学的および解剖学的解析を行った。研究対象植物として、渓流沿い植物のヤシャゼンマイを用い、その対照種としてゼンマイを用いた。またこれらは山梨県上野原市の鶴川流域から採集した。三点曲げ試験機を用いた力学的解析の結果、ヤシャゼンマイの葉柄がゼンマイのそれと比較して有意に柔軟性を獲得していることが明らかとなった。この柔軟性獲得のメカニズムを明らかにするために、葉柄の解剖学的計測を切片を用いたSEMによる微細形態の計測に加え、解離法を用いて細胞長の計測を行った。また計測箇所に関しては、葉柄は外からの圧力を表皮下の機械組織である皮層部分で受け止めることが報告されていたために、その部分の細胞形態の計測を行った。その結果、細胞が縦長と横長そして高さに関して有意にヤシャゼンマイが大きくなることが示された。また葉柄の単位体積当たりの重量の比較の結果から、ヤシャゼンマイの方が有意に軽くなることが示され、ヤシャゼンマイの細胞サイズの増加が葉柄の単位体積当たりの細胞壁量の減少を導いたことを支持した。これらの結果から、ヤシャゼンマイの葉柄はゼンマイのそれよりも有意に細胞を大きくすることにより、外部の力に対して支点間距離が長くなり柔軟性を獲得していることが明らかとなった。またこのことは単位体積当たりの細胞壁量の減少と関連しており、その結果ヤシャゼンマイは葉柄の先に大きな葉身を付けられなくなったことが示され、このことはヤシャゼンマイにおいて、葉身が受ける力の低下を導いていることが示唆された。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] Rheophytic Osmunda lancea (Osmundaceae) exhibits large flexibility in the petiole2024

    • 著者名/発表者名
      Shiba Masayuki、Fukuda Tatsuya
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 14 ページ: 2866

    • DOI

      10.1038/s41598-024-53406-4

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] A comparison of mechanical characteristics among Setaria viridis var. minor, Setaria italica, and Setaria ×pycnocoma species of the family Poaceae2023

    • 著者名/発表者名
      Shiba Masayuki、Sato Ryosuke、Fukuda Tatsuya
    • 雑誌名

      Plant Species Biology

      巻: 39 ページ: 51~58

    • DOI

      10.1111/1442-1984.12435

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Larvae of Sasakia charonda (Lepidoptera: Nymphalidae: Apaturinae) and three related species use oral odorants to repel ants and wasps2023

    • 著者名/発表者名
      Hayashi Taro、Holikawa Kaori、Akiba Hisako、Inoue Takashi A.、Niihara Kinuko、Fukuda Tatsuya
    • 雑誌名

      Chemoecology

      巻: 33 ページ: 147~159

    • DOI

      10.1007/s00049-023-00391-1

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Effect of strong wind on laminas and petioles of Farfugium japonicum (L.) Kitam. var. japonicum (Asteraceae)2023

    • 著者名/発表者名
      Shiba Masayuki、Mizuno Tsukumo、Fukuda Tatsuya
    • 雑誌名

      Frontiers in Plant Science

      巻: 14 ページ: 1182266

    • DOI

      10.3389/fpls.2023.1182266

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Behavioral and Electrophysiological Study on Eight Japanese Papilio Species with Five Hostplant Volatiles and Linalool2023

    • 著者名/発表者名
      Inoue Takashi A.、Suetake Mami、Nishidzu Narumi、Yokohari Fumio、Niihara Kinuko、Fukuda Tatsuya
    • 雑誌名

      Journal of Chemical Ecology

      巻: 49 ページ: 397~407

    • DOI

      10.1007/s10886-023-01433-2

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 渓流沿い植物ヤシャゼンマイの葉柄柔軟性に関する力学的および解剖学的研究2024

    • 著者名/発表者名
      柴政幸・福田達哉
    • 学会等名
      第 23 回日本植物分類学会
  • [学会発表] キク科ツワブキの葉身と葉柄に関する風荷重に対する影響2023

    • 著者名/発表者名
      柴政幸・水野九十九・福田達哉
    • 学会等名
      第87回日本植物学会
  • [学会発表] 海砂によるハマボッス種子表面への物理的損傷が発芽や海流散布能力に与える影響2023

    • 著者名/発表者名
      丸井裕暉・柴政幸・福田達哉
    • 学会等名
      第87回日本植物学会
  • [学会発表] ハマエノコロの環境適応形質の解明2023

    • 著者名/発表者名
      佐藤遼輔・柴政幸・福田達哉
    • 学会等名
      第87回日本植物学会
  • [学会発表] 蛇紋岩地の常緑林に発生したアンモニア菌アシナガヌメリの適応に関する研究2023

    • 著者名/発表者名
      深山寛人・福田達哉・伊野航・柴政幸・原田栞里・安井万奈・鈴木彰
    • 学会等名
      第26回日本きのこ学会

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公開日: 2024-12-25  

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