研究課題/領域番号 |
21K06325
|
研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
塚本 健太郎 藤田医科大学, オープンファシリティセンター, 講師 (00582818)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 種を超えた多型 / プロテアソーム / 対立遺伝子 |
研究実績の概要 |
遺伝的多型には、複数の生物種にまたがって存在する「種を超えた多型 (TSP)」が知られている。硬骨魚類では、免疫プロテアソームサブユニット遺伝子PSMB8がTSPを示すことが明らかになっている。軟骨魚類と条鰭類のPSMB8遺伝子にはアミノ酸配列で約20%もの違いが認められる二系統(A系統とF系統)が存在し、条鰭類では二型性を示す対立遺伝子として約4億年以上にわたり種をまたがって維持されている。また、肉鰭類と一部の条鰭類では、F系統を失ったのち、A系統からF系統様の対立遺伝子を創り出し、二型性を再獲得していることが示唆されている。 本年度は、条鰭類の野生集団内でのPSMB8遺伝子の二型性を確認することを目的とした。ダツ目メダカ科メダカ属のニホンメダカ(Oryzias latipes)では、上記のように二型性を再獲得しており、野生集団内でPSMB8遺伝子の二型性が存在することが確認されている。軟骨魚類と条鰭類に認められる二型性について、日本国内で野生個体が入手可能なコイ目コイ科タナゴ類を対象とした。岡山県で採取されたコイ目コイ科アブラボテ属のアボラボテ(Tanakia limbate)13個体とコイ目コイ科アブラボテ属のイチモンジタナゴ(Acheilognathus cyanostigma)8個体の野生個体を用いて解析を行った。各野生個体の尾鰭からゲノムDNAを抽出し、これを鋳型として両系統を増幅可能なプライマーを設計し、ゲノムPCRを行った。増幅されたPCR産物をシーケンスした結果、両種の野生集団からA系統とF系統の二型性が存在することが確認された。野生集団内の遺伝子頻度はA系統が約70%、F系統の約30%であり、F系統が低頻度である傾向が見られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、ニホンメダカの培養細胞から組換えIFN-γにより誘導されたPSMB8を含む免疫プロテアソームを精製し、多種の合成ペプチド基質を用いてPSMB8の二型間の切断特異性を比較する予定であったが、免疫プロテアソームの精製過程の改良に多くの時間を費やしたため、活性測定が完了していないため。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度以降、ニホンメダカの培養細胞から組換えIFN-γにより誘導されたPSMB8を含む免疫プロテアソームを精製し、多種の合成ペプチド基質を用いてPSMB8の二型間の切断特異性を比較する。 PSMB8遺伝子の二型性が脊椎動物の進化過程で少なくとも2回独立に、条鰭類と肉鰭類のある時期に失われたことが示唆されている。そこでこの時期を明確にするため、まず条鰭類と肉鰭類のそれぞれでA系統からのF系統様の獲得が確認されている種より古くに分岐した動物種を対象とし、その野生個体の採集を行い、PCRの鋳型として使用するゲノムDNAの抽出を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ニホンメダカ培養細胞から組換えIFN-γにより誘導された免疫プロテアソームを精製し、多種の合成ペプチド基質を用いてPSMB8の切断特異性を二型間で比較する予定だったが、本年度中に行えなかったため次年度使用額が発生した。この使用額は、当該実験を行うために次年度に使用する予定である。
|