研究実績の概要 |
昨年度分析を開始したホウキボシ科・ゴカクヒトデ科の254標本に加えて,さらに国立科学博物館所蔵ならびに他の研究機関に所蔵されている既存のヒトデ類標本の探索を行い,対象としているこれら両科の系統の検証に必要となる両科以外の種も含めることにより,形態・分子の両面から,国内外の研究協力者(昭和大学・蛭田眞一博士,米国スミソニアン自然史博物館Christopher Mah博士,マレーシア科学大学Woo Sau Pinn博士)とともに研究を進めた. 両科が混在し両科の分類の検討に最も重要な系統については,ミトコンドリアの12S rDNA, 16SrDNA, COIと核の28SrDNA, H3を加えた5領域で系統解析を進めている.これら両科を含むアカヒトデ上目の範囲は,ミトコンドリアの12S rDNA, 16S rDNAならびに核のH3の3領域を用いて系統解析を行った.さらに今年度からは,アカヒトデ上目内のこれら両科のヒトデ綱全体の系統の中での位置づけを探るべく,ヒトデ綱の主な系統を取り出しショットガン法にてミトコンドリアゲノム全長配列の解析も加えている. これらの標本の形態観察も進め,一部の標本については,国立科学博物館が所有するマイクロCTを利用して体内の骨片の形態の観察も行った.マイクロCTの観察によって得られた形態形質は,いくつかの属を再定義する上で非常に重要であることが明らかとなった. これまで得られたデータからは,ホウキボシ科が大きく2つの系統に分かれることがわかり,そのうちゴカクヒトデ科が混在する系統が,これら両科の系統分類を解決する上で最も重要であることが示されている.そのことから,分類体系の整理については,まずはホウキボシ科を定義することから始めるべきであることが示唆されており,一部の分類学的整理については論文執筆の準備を始めた.
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