研究実績の概要 |
引き続き,国立科学博物館のホウキボシ科・ゴカクヒトデ科を中心として,これら両科の系統の検証に必要となる両科以外の種も含めることにより,形態・分子の両面から研究を行った.国内外の研究協力者(昭和大学・蛭田眞一博士,米国スミソニアン自然史博物館Christopher Mah博士,マレーシア科学大学Woo Sau Pinn博士,東京大学・小林格博士)とともに研究を進めた. 両科が混在し両科の分類の検討に最も重要な系統については,ミトコンドリアの12S rDNA, 16SrDNA, COIと核の28SrDNA, H3を加えた5領域で系統解析を進めてた.これら両科を含むアカヒトデ上目の範囲は,ミトコンドリアの12S rDNA, 16S rDNAならびに核のH3の3領域を用いて系統解析を行った.さらに昨年度より開始したショットガン法にてミトコンドリアゲノム全長配列の解析によるデータも加え,アカヒトデ上目内のこれら両科のヒトデ綱全体の系統の中での位置づけについても検討を加えてた.一部のグループについては,国立科学博物館が所有するマイクロCTを利用して体内の骨片の形態の観察も行った.
これまで得られたデータから,ホウキボシ科が大きく2つの系統に分かれることがわかり,そのうちホウキボシ科とゴカクヒトデ科が混在するクレードが,これら両科の系統分類を解決する上で最も重要であることが示された.まずはホウキボシ科(狭義)を定義することから分類体系の整理を始めており,一部のゴカクヒトデ科のタクサについては記載論文として発表した.また,これらの研究の過程で,ターゲットとする両科以外で,ヒトデ類の系統分類に関する新知見が得られてきたので,それらについて記載論文を発表するとともに,系統についても学会発表を行った.
|