2023年度は、5月、11月に行われた研究航海において相模湾の初島沖冷湧水域や三崎沖、深海平原、明神海丘熱水域など異なる深海環境に設置した木材の回収、また沈木や海底プラスチックゴミの回収を行った。航海より得られた設置プラスチック、海底プラスチックゴミ、植物片、設置木材、深海生物などから新たに約400株の真菌分離株の取得に成功した。深海底よりサンプリングした沈木に付着していた菌類については、詳細な解析を行い、新種として記載論文を投稿した。深海由来植物片23試料と岸壁設置植物片1試料について真菌多様性解析を行い、Oceanitis属やCeriosporopsis属といった深海生菌類が高頻度で深海沈木に存在していることが明らかになり、その結果について国内&国際学会にて口頭発表を行った。また、主に深海環境から分離した真菌類のうち重要と思われる株をセレクションし、ゲノム解析に着手した。
研究期間全体を通し、様々な深海環境よりサンプリングを行い、深海底に沈む植物片をニッチとした深海生菌類の多様性や生態、有用機能について明らかにした。また、深海底で木材設置実験を行い、陸上木材に生息する真菌叢が深海環境でどのように変化するか、深海生菌類がどのタイミングで現れるかを解析中であり、今後も研究を継続していく予定である。また、研究期間を通し深海環境より分離した真菌類が産生する生理活性物質の探索を進め、強力な抗菌活性を示すものを含め複数の新規化合物を発見し、学会発表や論文発表などを行った。
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