研究課題
近年、新たな環境問題として海洋を漂う人工的なゴミ、特にマイクロプラスチック(以下、MPs)に注目が集まっている。申請者は、MPsの表層モニタリングと成魚による誤食の実態を明らかにしてきた。今回、この研究の過程で発見したことを基盤に「MPs問題の深層」に迫る。本年度は、東シナ海で1mmよりも小さいマイクロプラスチックはどこに存在するのかを明らかにする計画であった。そこで、九州西岸域でCTDによる採水法で調査した結果、平均サイズが46.5μmの微細なMPsが全水柱で検出され、深度100m付近の深い水中にも存在していることが明らかとなった。特筆すべきは、その密度の高さで1立方メートル当たり36万個±26万個(平均±S.D.)であった。すなわち、1mmよりも微小な、いわゆるsmall microplasticsが大量に海洋中に存在していることが示唆された。また、次年度以降に解析する海産仔稚魚をニューストンネットで採集してエタノール保存をして、一連のサンプリングを適切に実施した。以上の成果は、日本海洋学会で口頭発表を行い、現在、論文化に向けて取り組んでいる。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究計画では、モックネス(多段式開閉ネット)を利用して鉛直分布を調査する予定であったが、練習船側の都合により実施できなかったのは、予期していないことであった。しかし、代替案として考えていたCTDプロファイラーによる採水、および既存のニューストンネットを多段式に活用して鉛直分布を明らかにできた。特に、CTDによる採水では微小なマイクロプラスチックを捕集できたので、モックネスよりも多くの知見が得られたと考えている。従って、本研究は現在までおおむね順調に進展していると判断した。
今後は、鉛直方向のCTD採水法を継続するとともに、MPsの海洋中での動態を明らかにする目的で、時間当たりどれくらいMPsが海底に降り積もるのか?そして、MPsが既にどれくらい海底に堆積しているのかを調べる。また、仔稚魚の遺伝子解析にも着手する。堆積物を採集するマルチプルコアラーは、練習船が現有しており利用可能である。また、コアラーにセットするアクリル筒も複数本、製作済みで現有しているが、セジメントトラップと水中切り離し装置が必要となる。
すべて 2022 2021 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Marine Pollution Bulletin
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10.1016/j.marpolbul.2021.113304
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巻: 2021 ページ: 10.20.465208
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10.1101/2021.03.22.436354
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