研究課題/領域番号 |
21K06337
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
八木 光晴 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 准教授 (90605734)
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研究分担者 |
明正 大純 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 助教 (00781808)
藤本 真悟 琉球大学, 医学部, 技術補佐員 (60795102)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | マイクロプラスチック / 東シナ海 / 鉛直分布 / 誤飲 / CTD / 採水法 / 仔稚魚 |
研究実績の概要 |
近年、新たな環境問題として海洋を漂う人工的なゴミ、特にマイクロプラスチック(以下、MPs)に注目が集まっている。申請者は、MPsの表層モニタリングと成魚による誤食の実態を明らかにしてきた。今回、この研究の過程で発見したことを基盤に「MPs問題の深層」に迫る。 本年度は、東シナ海で1mmよりも小さいマイクロプラスチックはどこに、どれくらい存在するのかを明らかにするとともに、MPsの海洋中での動態を明らかにする目的で、時間当たりどれくらいMPsが海底に降り積もるのか?そして、MPsが既にどれくらい海底に堆積しているのかを調べる予定であった。また、予備的にニューストンネットによるサンプリングで得られた仔稚魚の遺伝子解析に着手することも予定していた。 予定していた事項は、全て順調に進めることができた。すなわち、LDIR解析により微細なMPsは確かに海洋中で検出され、ポリエチレン35%、ポリアセタール21%、ポリプロピレン7.6%であった。MPs密度は蛍光観察で6311(個/L)、LDIRで122(個/L)であり、蛍光観察では有機物を計数しており過大評価になっていると考えられた。 以上の成果は、一部国際論文で発表するとともに、複数の学会で発表を行った。また、現在、さらなる知見の論文化に向けて取り組んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実海域でのサンプリングは、時化(しけ)などの影響により必ずしも計画通りに進まない場合が多い。本年度も度々、時化により思うようにサンプリングできない時もあったが、昨年度に予備的にサンプリングしていた仔稚魚を用いることで、当初計画の目的を達することができている。また、他の計画も実施できていることから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、野外採水のサンプリングを継続するとともに、最もMPsが多く存在している海表面近くの空間と同所的に存在する仔稚魚への影響を明らかにする目的で種同定と消化管内のMPs量を調べる。具体的には、遺伝子解析は仔稚魚のミトコンドリアDNAのCOI, 12s rRNAおよび、16s rRNAなどの領域についてDNAのPCR増幅を行い、サンガー法で塩基配列を決定する。得られた塩基配列は魚類のミトコンドリアDNAデータベース、MitoFishに登録された配列情報とBLAST検索で照合して仔稚魚が属する分類群を種レベルで同定する。また、誤食実態は実体顕微鏡下で胃と腸を摘出して、MPs含量を調べる。より小さなサイズのプラスチックの種類判別が可能である顕微タイプのFT-IRで分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は旅費等で必要であったが、会議の多くがコロナ禍によるオンラインに切り替わったため次年度使用額が生じた。一方、翌年度にはDNA検査用試薬が当初よりも多く必要となるためその分の費用として使用する。
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