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2021 年度 実施状況報告書

ミズゴケの陽イオン交換能による湿原酸性化メカニズムの検証

研究課題

研究課題/領域番号 21K06339
研究機関東京農業大学

研究代表者

中村 隆俊  東京農業大学, 生物産業学部, 教授 (80408658)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワードミズゴケ / 湿原 / pH
研究実績の概要

湿原における強酸性環境の存在は、生態系機能や植生分布機構の維持において、極めて重要な位置づけにある。本研究では、湿原の強酸性化メカニズムを明らかにするため、ミズゴケ類による陽イオン交換を通じた水素イオン放出に着目し、立地のpH環境との定量的な検証を試みる。
2021年度は、北海道別寒辺牛湿原においてフェンからボッグへの連続的な植生変化をカバーする調査定点を設定し、ミズゴケ類の基本的な分布・生育特性と立地環境との対応関係について調査・解析した。調査定点に出現した主要なミズゴケ類5種および苔類1種を対象種とし、各種のパッチ構造調査(被度、シュート長、シュート本数密度、シュート重量)および夏期・秋期のシュートサンプリングを実施した。加えて、各調査定点における地下水位観測を実施するとともに、土壌水の採取・分析を行った。
各種パッチにおける土壌水pHの平均値は、ボッグのチャミズゴケで最も低いpH4.1を示し、フェンのクシロミズゴケとエゾコガネハイゴケで最も高いpH5.9を示した。ムラサキミズゴケ、イボミズゴケ、オオミズゴケのパッチはボッグからフェンへの移行帯に多く出現し、pH4.7〜5.3付近の中間的なpH環境に分布した。
ボッグに分布するチャミズゴケはシュートが短く高密度で大きなパッチを形成し、フェンに分布するクシロミズゴケやエゾコガネハイゴケはシュートが長く低密度で小さなパッチを形成する傾向にあった。移行帯に分布するムラサキミズゴケ、イボミズゴケ、オオミズゴケのパッチは、いずれもシュートが大型でやや低密度となることが示された。
これらのことから、湿原に分布するミズゴケ類は、強酸性環境だけでなく幅広いpH環境下に分布しておりパッチ構造も多様であることが確認された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初は隔月でのサンプリングを予定していたが、予算の都合により春・夏・秋のサンプリングへと変更することとなった。ただし、それらの変更による研究内容への大きな影響は無く、概ね予定していた解析・評価は可能と判断している。

今後の研究の推進方策

2022年度は、春期のミズゴケシュートサンプリングを実施し、それらを含めた春・夏・秋のミズゴケサンプルについて陽イオン交換容量を明らかにする。陽イオン交換容量の分析に際しては、ミズゴケシュート表面の陽イオン交換サイトを機能的に分類し(水素イオンを交換可能な有効サイトと交換不能サイトを区別)、それぞれミズゴケシュートの単位重量あたり・パッチ単位面積あたりで値を求める。これらのデータをもとに、種間・季節間で陽イオン交換容量の比較を行うとともに、各ミズゴケパッチにおける土壌水pH環境との対応関係について解析する。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルスの感染拡大時に一部の調査・分析を中止したため予算に余剰が生じた。今後の使用計画としては、それらの中止した調査・分析について、今年度以降実施するために予算を執行する予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2022

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 湿原における強酸性環境の分布とミズゴケの陽イオン交換能との関係2022

    • 著者名/発表者名
      中村 隆俊, 石橋 結衣, 小野 元偉, 中村 元香
    • 学会等名
      日本生態学会

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公開日: 2022-12-28  

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