研究課題/領域番号 |
21K06340
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
小沼 順二 東邦大学, 理学部, 准教授 (10613838)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | マイマイカブリ / QTL / 体サイズ / 平行進化 |
研究実績の概要 |
生物の適応分化機構の解明は生態学の重要テーマである。研究代表者は、形態が多様化しているマイマイカブリを材料に適応分化の研究を進めてきた。マイマイカブリは、体の形に関する変異が大きい一方、体の大きさに関する変異も地域集団間で著しい。先行研究の結果、体の形に関する遺伝基盤の解明が進んだが、体の大きさの遺伝基盤はよくわかっていない。そこで、本研究では、分子生物学的手法を用い、マイマイカブリの体の大きさに関わる遺伝基盤を解明することを目的とした。 はじめに、体サイズに関する遺伝基盤解明を目的に、大型と小型のマイマイカブリ亜種を掛け合わせ、戻し交雑系統を構築する実験に取り組んだ。その結果、十分な数のF1雑種個体と戻し交雑個体を作出することができた。また、同一条件下で大型と小型マイマイカブリの作出も行い、親集団の構築も行った。以上、大型と小型の親集団、F1集団、戻し交雑集団の形態解析を行い、それぞれの個体の体サイズを測定した。得られた体サイズ値を使って、joint-scaling法から体サイズに関する相加遺伝効果を検証することができた。また、Castle-Wright法から体サイズに関わる遺伝子座数を推定することができた。 また、作出した戻し交雑個体と祖父母個体からDNAを抽出したのち、次世代シーケンサーを用いてGenotyping by Random Amplicon Sequencing-Direct (GRAS-Di)法に基づくシーケンシングを行った。その結果、18億リード、252Gbpのシーケンスデータを獲得することができた。獲得したシーケンスデータを用いて、遺伝子型決定を行った結果、連鎖解析に用いることができる5,000以上の分子マーカーを獲得することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オサムシのような非モデル生物において、QTLマッピングに必要な分離世代構築は非常に難しく、多くの研究では100個体前後の分離世代構築が一般的といえる。しかし、本研究では、当初予想していた以上に系統構築に成功し、最終的には240個体以上の戻し交雑個体を作出することができた。これら十分数の分離世代が構築できたことで、QTLマッピングにおいて詳細な遺伝領域推定が期待できる。また、次世代シーケンサーに基づいたGRAS-Diシーケンスの結果、ゲノム上に均一な5,000以上の分子マーカーを獲得することができた。これらの分子マーカーを使うことでゲノム全体を均一にカバーする高密度連鎖地図の作成が可能といえる。以上から、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、前途の量的遺伝解析に関する内容をまとめ学術雑誌に研究結果の発表を行う。また、獲得した分子マーカーを使って、連鎖解析を行い、遺伝的連鎖地図を作製するとともに、体サイズに関してQTLマッピングを行い、連鎖地図上の体サイズ遺伝領域を推定する。仮に、統計的に有意な複数の遺伝領域が推定された場合、遺伝領域間の交互作用(エピスタシス)の有無等の検証も行う。また、マイマイカブリは雌雄で体サイズが異なるため、性特異的に寄与している体サイズ遺伝領域の有無等も検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な理由は、本年度、独立基盤形成支援の追加交付が行われたことと、実験計画の変更のためである。今後の使用計画としては、遺伝子発現解析のためのシーケンス解析や、冷凍庫やワークステーションの購入を計画している。
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