研究課題/領域番号 |
21K06345
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
佐藤 俊幸 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80242238)
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研究分担者 |
小山 哲史 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (10549637)
佐々木 謙 玉川大学, 農学部, 教授 (40387353)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 協力行動 / 非血縁 / 行動操作 / オクトパミン |
研究実績の概要 |
チクシトゲアリは結婚飛行後、創設女王が血縁に関係なくしばしば複数で同じ営巣場所で越冬し、栄養交換し、共同で幼虫の世話をしながらコロニーを創設するアリである。これまでの研究により、創設期の女王より成熟巣の女王の方が脳内オクトパミン濃度が有意に高いこと、女王数が多いほど女王の脳内オクトパミン濃度が高いこと、オクトパミンを経口摂取させると栄養交換などの協力行動の頻度が低下し、相手の触角を噛んで引っ張るなど敵対的な行動を誘導できることが明らかになった。栄養交換を拒否された場合、拒否した相手に対し攻撃的にふるまうことも明らかになった。相手の大顎に噛みつき、栄養を吐き戻すまで離さない行動も観察し、相手から栄養交換を引き出す駆け引きの存在が示唆された。これまでに以下の行動実験を行った。(1)ペア間の協力行動:コントロールでは片方の女王にのみ10%ショ糖水を給餌し、給餌しなかった女王との栄養交換行動を解析した。給餌個体から非給餌個体への口移しの栄養交換行動が確認され、体重の移動があった。一方、実験区では、片法の女王にオクトパミン2㎎/ml入りの10%ショ糖水を給餌し、非給餌個体との相互作用を録画した。栄養交換の回数と時間及びアログルーミングの回数と時間はショ糖のみ給餌に比べ、オクトパミン給餌では有意に頻度が低かった。(2)トリオでの協力行動:創設女王3個体のうち1個体にのみ10%ショ糖水、あるいはオクトパミン2㎎/ml入りの10%ショ糖水を給餌し、給餌しなかった女王2個体との相互作用を録画し、解析した。栄養交換の回数と時間及びアログルーミングの回数と時間は、対照群と比較してオクトパミン投与群で低下し、協力行動を抑制する働きが確認された。給餌個体が餌交換を拒否しつづけると、相互作用が減少していき、無視されるようになるケースがあった。その場合、非給餌個体同士で対面接触し続けるようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ感染状況で野外調査が制限され、創設女王の確保とそれを用いた実験に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ感染状況も緩和されていることを期待し、実験材料を確保し、実験の遅れを解消する。具体的には、一緒に越冬した女王同士は体表の巣仲間識別物資が類似し、越冬前は区別せず協力する非巣仲間女王を区別するようになり、非巣仲間に対する協力行動が低下するのか明らかにする。また、RNAseqを用いて創設女王と成熟巣の女王の脳内の遺伝子発現の比較解析も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染状況により野外調査が制限され、次年度に繰り越したため。コロナ感染状況が収まり次第、調査を再開し、遅れた実験を遂行するために科研費の残額を使用する。
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