研究課題/領域番号 |
21K06356
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研究機関 | 滋賀県立琵琶湖博物館 |
研究代表者 |
中井 克樹 滋賀県立琵琶湖博物館, 研究部, 特別研究員 (80222157)
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研究分担者 |
林 紀男 千葉県立中央博物館, その他部局等, 研究員(移行) (60250156)
横川 昌史 地方独立行政法人大阪市博物館機構(大阪市立美術館、大阪市立自然史博物館、大阪市立東洋陶磁美術館、大阪, 大阪市立自然史博物館, 学芸員 (30649794)
嶺田 拓也 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究部門, 上級研究員 (70360386)
日鷹 一雅 愛媛大学, 農学研究科, 准教授 (00222240)
上河原 献二 滋賀県立大学, 環境科学部, 教授 (40516126)
野間 直彦 滋賀県立大学, 環境科学部, 准教授 (80305557) [辞退]
伊藤 彩乃 ミュージアムパーク茨城県自然博物館, 資料課, 学芸員 (70808469)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 侵略的外来種 / 初期防除 / 外来水生植物 / 普及啓発 / オオバナミズキンバイ / ナガエツルノゲイトウ |
研究実績の概要 |
2022年度も新型コロナウイルス蔓延の影響が継続したが、夏には分担者が主催するワークショップが滋賀県で、エクスカーションが京都府~大阪府で開催され、構成員が参加して、意見交換や情報共有を行うことができた。 琵琶湖・淀川水系では、琵琶湖および周辺水域におけるオオバナミズキンバイ(亜種ウスゲオオバナミズキンバイ)とナガエツルノゲイトウの防除対策事業で得られたデータを分析した結果の一部を論文化するとともに、学会・研究会での発表を行った。また、大阪府下でも新たな生育場所が確認された。 利根川水系においては、霞ヶ浦では侵入初期段階のオオバナミズキンバイに対しては、分担者が地域の多様な主体が参加する駆除活動と施設内での栽培実験を継続している。一方、ナガエツルノゲイトウの湖内および周辺河川における分布状況の調査も継続した。手賀沼では、2022年度も引き続き地元の環境保護団体の協力を得て、千葉県の対策事業に対する助言・支援を行ったが、懸念された湖の下流側・東半分での急増に加え、流出河川・手賀川でも新たな生育が確認された。また分担者によるオオバナミズキンバイの生育によるミジンコ等への影響を解明するための実験も継続した。 鹿児島県肝属川水系では、2022年度も地元の土地改良区の協力を得て、オオバナミズキンバイの水田への侵入・生育・被害状況の調査を実施し、河川・水路を対象にした分布・生育状況調査の範囲を拡大して実施し、新たな支流での分布も確認された。水系内の分散要因として、残土や牧草の運搬の可能性が示唆される発見もあった。 各地で農地への侵入が確認されるようになり、農業関係者を対象とした普及啓発の一環として農業関係の雑誌に分担者とともに啓発的著作を発表した。前年度提案された実物標本を使った参照用キットを作成し博物館等へ配布する参照標本の作成については、引き続き準備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
滋賀県の琵琶湖および周辺水域におけるオオバナミズキンバイ・ナガエツルノゲイトウの生育・分布状況調査および駆除事業、巡回・監視事業に関して、滋賀県、琵琶湖外来水生植物対策協議会、環境省近畿事務所から過去8年にわたる報告書データを利用して、データ類のGIS化を進めて分析を開始し、その一部を論文・研究発表として公表できた。また、得られた成果を事業の効率的な実施にも反映させている。 霞ヶ浦では、関係機関や有志からなる連携体制を継続し、オオバナミズキンバイの防除に努めている。2022年の実施は10月となり、前回(2021年7月)から間隔が開いたため、3箇所中2箇所では再生量の増加が確認され、河川管理者が対応した1箇所でも再生が確認されたが、駆除努力を高めて低密度状態に持ち込めた。また、ナガエツルノゲイトウに関しては周辺水域を含めた分布生育状況調査を進めることがができた。 肝属川水系では、オオバナミズキンバイの水田地帯の特定箇所で詳細な侵入状況の確認を行い、営農者へのヒアリングも実施できた。また、河川・水路における分布状況調査に新たに支流1本を追加して拡大した。当地への侵入源と推測される2箇所に関する裏付け調査を進めるとともに、水系内に定着後の分布拡大の要因として残土や牧草の移動の可能性を示唆する事例を発見することができた。 普及啓発に関して、琵琶湖周辺、手賀沼周辺、肝属川周辺の営農関係者に対して拡大し、2021年度に提案された参照用の標本キットの作成の準備を継続した。また、オオバナミズキンバイに関しては、成育状況などの基礎的生態や、他の生物への影響を明らかにするようデザインされた室内実験も継続させている。
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今後の研究の推進方策 |
滋賀県・琵琶湖および周辺水域における事業データの分析により、内陸部への分布拡大のメカニズムを推定し、駆除作業による局所根絶できた箇所を特定することができた。巡回・監視による低密度状態を維持する効果についても、評価を進めている。評価は暫定的なものであるが、順応的管理の原則に立ち2023年度の事業の経費縮減にも採用される予定。これらの外来植物の防除の現場において、特に有効な駆除対策や低密度管理の計画立案等に有効に利用されるものと期待される。 霞ヶ浦において特にオオバナミズキンバイに関しては、侵入初期の積極的駆除を継続し、低密度状態を維持し、巡回間隔が開くことによるリスクも明らかとなり、初期対応のあり方に関するモデル的事例を提示することができると期待される。 肝属川流域の河川・水路の分布により、オオバナミズキンバイの分布拡大が河川の自然流と農業用水利用による下流方向のものと、河川感潮域における満潮や風の影響による上流方向のものとを総合的に考慮することで説明でき、このような環境における分布様式に関するモデルとして活用できると期待され、今年度は宍道湖の流入河川での調査を追加実施する予定。 普及啓発に向けた取り組みとして、参照用の標本キットを具体的に製作し配付することは、普及啓発のツールをさらに別の形でも考案するための参考になると期待される。また、農業現場に対する普及啓発も代表者・分担者が関わる複数の地域で必要性が高まっており、本研究の成果を反映させた指導・助言により、その効果を高めることが期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの蔓延等の影響もあり、構成員の相互交流や構成員が外地の研究者として調査地することが難しい状況が生じたこと、および調査地が遠隔地である場合(全構成員にとっての鹿児島など)に配分額が十分ではなく、事前準備を十分に行ったうえで、現地調査を実施する必要があることから、実施初年度と2年目の経費の使用額を抑えたため。 最終年度には、主として代表者が事前調査を蓄積している鹿児島において、複数の分担者と合同で調査を実施することを計画している。
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