研究課題/領域番号 |
21K06360
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
國松 豊 龍谷大学, 経営学部, 教授 (80243111)
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研究分担者 |
日下 宗一郎 東海大学, 海洋学部, 特任講師 (70721330)
西岡 佑一郎 ふじのくに地球環境史ミュージアム, 学芸課, 主任研究員 (00722729)
半田 直人 東京都立大学, 人文科学研究科, 客員研究員 (60792009)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ヒト上科 / オナガザル上科 / 中新世 / 東南アジア / 化石 / 哺乳類 / 古環境 |
研究実績の概要 |
2021年度は新型コロナウイルス問題がまだ終息せず、計画していたタイへの渡航とタイ東北部ナコンラチャシマでの現地調査の実施は次年度以降に見送ることにした。ただ、タイとの共同研究は長年にわたって継続されており、2021年度は研究班のメンバーがこれまでに収集したタイ東北部の新生代脊椎動物化石およびその古環境に関するデータの整理と分析を国内で進めた。ナコンラチャシマ近郊のプラプット採砂場から産出した哺乳類化石群集について、これまでに収集したデータを整理し、研究成果を日本古生物学会で公表した。また、ユーラシアの新第三紀哺乳類化石の3Dデータを取得し、タイ産哺乳類化石との比較資料を収集した。化石群集の生息環境の復元のため、哺乳類歯牙化石のエナメル質から採取された試料の安定同位体分析を進めた。 日本側研究者がタイに渡航できないあいだにも、タイ側共同研究者らがナコンラチャシマ近郊の化石産地において現地調査を継続している。2021年度にタイ側共同研究者らが実施したターチャン採砂場での調査についてオンラインで情報を共有し、彼らが収集した一連の哺乳類化石の予備的な同定を進めたところ、中新世の種と更新世の種が見出され、複数の産地(層準)から得られた標本が混在していることがわかった。このうち、サイ科については、後期中新世のBrachypotherium属が含まれていた。また同じ産地から産出したとされる絶滅奇蹄類のカリコテリウム科を調査した結果、ミャンマーや中国南部で記載されたAnisodon属に近いと考えられた。タイではカリコテリウム科化石はまだほとんど報告されておらず、興味深い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究ではタイ東北部コンラチャシマ近郊から産出した霊長類を含む新生代後期の脊椎動物化石の分析を主体としている。これらの化石はナコンラチャシマの化石博物館に保管されており、オリジナル標本を調べるために現地での実地調査が必要である。しかし、2021年度もいまだ新型コロナウイルス問題が終息せず、本研究の調査対象地域であるタイにおいても、新型コロナウイルスの感染が続いていた。そのため、2021年度にタイへの渡航とナコンラチャシマの博物館への訪問、収蔵標本の調査を予定していたが、タイ国内の新型コロナウイルス感染状況や出入国規制の情報を収集・検討した結果、2021年度のタイ渡航・現地調査は見送らざるを得なかった。ただし、新型コロナウイルス問題のために日本側研究者がタイへ渡航できないあいだも、タイ側共同研究者らがナコンラチャシマ近郊から化石の収集は継続している。また、日本・タイの共同研究は長年継続されてきたものであり、このような状況のもとでも、従来収集した化石や古環境に関するデータの整理と分析は国内で進めている。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス問題のためにタイへ渡航できなかった期間にも、タイ側共同研究者らがナコンラチャシマ近郊の化石産地から新たに産出した化石を収集し、博物館に保管しているという連絡を受けている。新型コロナウイルスの感染状況次第ではあるが、現時点では、2022年度後期にタイへ渡航し、ナコンラチャシマの博物館で保管されている新しい化石標本の調査および周辺化石産地の現地調査を実施する予定である。国内では、これまでの調査で見つかった化石標本の記載の公表のため、従来収集したデータの整理と分析作業を継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、2021年度中に、タイ東北部ナコンラチャシマの珪化木博物館に所蔵されている化石の標本調査と化石産地の現地調査のために、研究組織メンバーでタイへ渡航する計画であったが、新型コロナウイルスの感染状況が思わしくなかったので、タイでの現地調査は次年度以降に延期した。そのため、一部、次年度への繰越金が生じた。2022年度には、新型コロナウイルスの感染状況を考慮しつつではあるが、安全上および渡航手続き上の問題がなければ研究組織メンバーによるタイへの渡航と現地調査を予定しており、そのための旅費および化石資料の調査・分析に必要な物品の購入、研究成果の公表などのため予算を使用する予定である。
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