研究課題
2023年度は、2024年2月下旬から3月上旬にかけて、タイ東北部ナコンラチャシマにおいて現地調査を実施した。共同研究対応先であるコラート化石博物館(=東北タイ珪化木博物館)を訪問し、ナコンラチャシマ周辺のサンドピットから出土して同館に保管されている哺乳類化石を調査した。今回は、以前から調査を進めているターチャン地区のタクットコン及びプラプット・サンドピット産の哺乳類化石、特に長鼻類、偶蹄類、奇蹄類を中心にデータ収集を継続するとともに、やや北に離れたピーマイ近郊に最近新たに開削されたシンチャルーン・サンドピット産の脊椎動物化石を整理分類し、写真撮影・計測等をおこなった。また、これらの化石標本の歯牙エナメルから同位体分析用のサンプルを採取した。ターチャン地区の後期中新世の化石動物群集に関しては、長鼻目に祖先的なStegolophodonと派生的なStegodonならびにSinomastodonの3属が混在すること、奇蹄目のサイ科には少なくとも4属4種、カリコテリウム科に1種が存在することなどが確認された。シンチャルーン・サンドピットについては、前年度の調査の際には、このサンドピットから得られていた化石は鮮新世/更新世と考えられるものだったが、今回の調査では、シンチャルーン・サンドピットの掘削がより下部へ進んだことで中新世後期の哺乳類化石(例えばターチャン地区の上部中新統からも産出するサイ科Brachypotherium perimenseなど)も出始めていることがわかった。また、今回調べたシンチャルーン・サンドピット産の鮮新世/更新世と思われる化石の中に1点、テナガザル程度の大きさの霊長類の頭蓋冠の可能性がある標本が含まれており、自然人類学的観点からも、シンチャルーン・サンドピットが今後の化石探索において有望な産地であることが示唆された。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (1件) 図書 (1件)
Annales de Paleontology
巻: 109 ページ: 102659
10.1016/j.annpal.2023.102659
PalZ
巻: 97 ページ: 621~626
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