研究課題/領域番号 |
21K06362
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
宇都野 創 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 特任助教 (60367521)
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研究分担者 |
櫻田 宏一 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (10334228)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 復顔法 / 法人類学 / 欠損頭蓋骨 / 下顎骨欠損 / 眼球位置 |
研究実績の概要 |
報告者らは東京大学(以下、東大)および千葉大学(以下、千葉大)で撮影された死後CT画像(以下PMCT)約200事例の計測解析をおこなった。これらの内、146事例において眼窩と眼球の位置関係の検討をおこない、この結果を論文発表した。以下眼窩に関する研究および欠損下顎骨に関する研究の2系列にわけて概要を報告する。 眼窩と眼球の位置関係の検討:PMCT画像上の眼窩を構成する骨および眼球(角膜の最前部:oa)に計測点を設定し、眼窩の高径および幅径に対する眼球位置を計測した。高径は眼窩上縁と下縁間の距離(OBH)幅径は眼窩内側縁および眼窩外側縁の距離(dmom-dlom)として、これらに対するoaの位置を先行研究に倣って100分率で示した。観察から得られたデータを精度検証のためのサンプルに適用し、OBHに関しては良好な結果を得ることが出来た。これらの結果はForensic Imaging https://doi.org/10.1016/j.fri.2022.200504 に報告を行った。この結果は生体から計測した報告とひかくして大きな解離を認めなかった。 欠損下顎骨に関する研究:東大および千葉大で撮影されたPMCT画像200事例の頭蓋骨の下顎骨およびその他の頭蓋骨に人類学的計測点を設定、計測した.下顎骨の計測値とその他の部位の計測値を比較して、相関関係の高いものから回帰方程式を算出した。算出した回帰方程式は精度評価用のサンプルおよび本学所蔵の明治から大正時代にかけての年代の頭蓋骨に適用して精度を検証した(令和3年7月31日、第15回日本法歯科医学会総会において成果を発表)。現在は頭蓋骨の形態をコンピュータに学習させ、頭蓋骨の特徴を抽出した相同モデルを作成してここから下顎骨の形態を推定すべく研究を行っている。 鼻部の推定に関する研究を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
眼窩と眼球の位置関係に関する研究は、眼窩と眼球の前後的位置関係および眼窩の幅径と眼球の関係において改善の余地を認めるが、研究の遂行に関しては概ね良好である。前後的位置関係は、検体が仰臥位であるための眼球の沈下等の影響が考えられる。また眼窩幅径に関しては、眼窩の内側縁および眼窩外側縁の距離の計測において、眼窩の内側縁の計測点の設定が同部位の形態の複雑さが計測点の設定を困難にしていることが計測者内および計測者間の計測誤差が原因している事が示唆された。このため、画像上で目視による確認が容易な計測点を設定することで誤差の減少が期待できると考える。これにより精度の高い推定法を確立する。 頭蓋骨と下顎骨の計測に関しては、計測部位、計測項目は概ね決定した。しかしながら現在、性別や骨格型等に分類を試みるとサンプル数が十分でないためにサンプルの分布が正規分布にならないという事態に直面している。このため今後も継続してサンプル数の増加を行う必要がある。さらに現在は頭蓋骨の形態をコンピュータに学習させ、頭蓋骨の特徴を抽出した相同モデルを作成してここから下顎骨の形態を推定すべく研究を行っている。これはこれまで計測を行ったサンプルのCT画像を相同モデルの作成ソフトウェア上で記録、学習するもので、ここで相同モデルとこれまでの計測データとの比較解析を行っている。 鼻部の推定に関しては、軟組織の鼻翼と梨状口周囲のランドマークを計測解析し、X軸上(水平方向)およびZ軸上(上下方向)における最も相関の高い部位を検出して鼻翼推定の指標とした。
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今後の研究の推進方策 |
現在のペースで研究の遂行が可能であれば今年度内には予定数(約300検体)に達すると思われるが、下記の3点の改善および再構築の必要性を認めた、1)眼窩に対する眼球の突出推定の制度改善、2)眼窩幅径計測の再現性の改善、3)頭蓋骨と下顎骨の関係におけるサンプル数の不足である。1)に関しては、姿勢による軟組織に対する重力の影響を考慮した補正値の算出の必要性を認めた。しかしながら、現時点では検体の計測からの算出は困難であるため、他の研究報告からの考慮が必要である。2)に関しては現在までの進捗状況に、眼窩幅径に関しては、眼窩の内側縁および眼窩外側縁の距離の計測において、眼窩の内側縁の計測点の設定が同部位の形態の複雑さが計測点の設定を困難にしていることが計測者内および計測者間の計測誤差が原因している事が示唆された。このため、画像上で目視による確認が容易な計測点を設定することで誤差の減少が期待できると考える。これにより精度の高い推定法を確立する。 3)検体数を増加する事によってのみ解決できるものである。 以上を踏まえ、計測を続行する。 鼻部の研究に関しては、今回の研究とこれまでの研究の結果を考慮した鼻部全体の推定法の確立を目指して研究を遂行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス等の影響で国際学会等への参加が不透明になり、学会が次年度に順延されたためある程度研究費を残しておく必要があったため。
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備考 |
(1)は学内専用ページ
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