タンパク質のパルミトイル化は神経機能に重要な役割を果たしており、大規模ゲノム解析ではいくつかのパルミトイル化酵素遺伝子の変異と統合失調症への関連が示唆されている。筆者らは大脳における神経活動依存的な遺伝子発現とその機能を探索している過程において、哺乳類の24種類のパルミトイル化酵素遺伝子のうち、Zdhhc18とよばれる遺伝子が活動依存性を示すことを見出した。本研究においては、この機能未知である、新規活動依存的パルミトイル化酵素遺伝子Zdhhc18の神経細胞、マウス個体における機能及び病態への関与の機構を明らかにすることを目的とした。すなわち1)Zdhhc18の細胞内での局在解析や単一神経細胞レベルでのZdhhc18欠損あるいは強制発現による機能変化解析、2) Zdhhc18遺伝子欠損マウスによる生理機能解析、3) Zdhhc18遺伝子欠損マウスの神経活動の変化が統合失調症等病態に寄与するかの解析を行う予定であった。 実績1) Zdhhc18の細胞内での局在解析は有効な抗体などがなくできなかった。2) zdhhc18 KO マウスと野生型マウスの海馬歯状回、前頭前野にCre依存性に蛍光赤色色素mcherry を発現するウイルスベクターを導入して神経細胞の形態の差異を同定しようとしている。切片の透明化を行い極厚の切片で顆粒細胞などの全体が観察できるようにして樹状突起の長さ、複雑さ。スパイン形態変化などの定量化を試みている。3)野生型マウスとzdhhc18 KOマウスの行動解析を行っている。KOマウスにおいて統合失調症の特徴とされるプレパルスインヒビションは観察されなかった。オープンフィールド実験などにおいてKOマウスでは運動量の亢進、不安の低下などがみられそのメカニズムの解析を始めている。
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