研究課題/領域番号 |
21K06379
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
濱田 耕造 東邦大学, 理学部, 訪問研究員 (00311358)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 小胞体 / カルシウムシグナリング / 認知症 / 細胞死 / 細胞老化 |
研究実績の概要 |
1980年代から提唱されている「脳老化のカルシウム仮説」では、細胞内Ca2+濃度の上昇が神経細胞死を起こし認知症を発症するものと考えられていた。しかし、単純なCa2+濃度上昇による細胞死のみでは神経細胞死以前に生じる機能低下や軽度認知症の発症メカニズムそして認知症に共通の所見である神経原繊維の形成は説明できない。 本研究では小胞体の微小領域(マイクロドメイン)におけるCa2+シグナルに焦点をあて新知見を得る。高濃度のCa2+は細胞死を起こすが、正常の脳の神経活動においてはCa2+は重要なシグナル分子である。しかし、何故、特に認知症の場合にCa2+はシグナル分子ではなく神経変性を誘導する因子として働くのか。本研究では、マイクロドメインにおける小胞体Ca2+シグナルがこの矛盾を解決すると考え実験を行う。小胞体の構造は古典的な教科書に記述されているように細胞核の周囲に局在する単純なものでは無く、細胞内のあらゆる部位に広域分布し、細胞質膜やミトコンドリアそしてリソソームなどの数々の細胞内小器官と物理的に結合する膜接合部位を形成することが明らかになって来た。最近の研究ではこの小胞体マイクロドメインの膜接合部位がアポトーシスやオートファジーそして細胞老化を制御することが報告されている。本研究では小胞体マイクロドメインにおけるCa2+シグナルに注目し欧米の研究室と国際共同研究を行い既に原著論文として発表した(BBA,2022, Cell Death Diff, 2022)。これらの成果は小胞体マイクロドメインがアポトーシスなどの重要な細胞内プロセスを調節する分子メカニズムを示唆する。今後は更にこれを深め小胞体マイクロドメインのCa2+シグナルが認知症発症機構と関与する可能性を検証していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
国際共同研究を展開しているため、コロナウイルスによる世界的パンデミックにより多大な被害をうけている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題では小胞体マイクロドメインに着目し、小胞体マイクロドメインが形成する膜接合部位に局在するカルシウムチャネル等と複合体を形成する蛋白質群を同定する。この実験で同定された蛋白質のうち、小胞体Ca2+チャネルと接合する他のオルガネラの蛋白質に注目することで、様々な小胞体マイクロドメイン蛋白質を同定することが可能となる。これらのアプローチにより既報に無い新しい成果が期待できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により本計画の変更が余儀なくされた。これは使用計画を作成した時点では予期できず、次年度使用額が生じた。次年度は、研究の再開に向けて、実験や旅費などに使用したい。特に国際共同研究を継続するために必要な経費にも使えることを期待する。
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