研究課題/領域番号 |
21K06383
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研究機関 | 安田女子大学 |
研究代表者 |
中西 博 安田女子大学, 薬学部, 教授 (20155774)
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研究分担者 |
野中 さおり 安田女子大学, 薬学部, 講師 (40767787)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | カテプシンH / インターフェロン-beta / ミクログリア / アストロサイト |
研究実績の概要 |
脳損傷に伴って生じるアストログリオーシスがどのように形成され、脳機能の回復にどのように関与するのかを理解することは、損傷脳の機能再生・回復技術の開発にとって不可欠である。しかし、不明な点が多いのが現状である。申請者は、リソソーム性プロテアーゼの一種であるカテプシンHを欠損させたマウスにおいて、低酸素/脳虚血により著明なニュー ロン死と高度なアストログリオーシスが生じ、脳萎縮は軽度であることを見出した。一方、野生型マウスでは、低酸素/脳虚血により著明な脳萎縮が生じた。カテプシンHは正常脳では血管内皮細胞に局在しており、 低酸素/脳虚血後は活性化ミクログリアに発現増大 が認められた。さらに先行研究と予備解析より、カテプシンH欠損によるミクログリアからのインターフェロン-beta(IFN-beta)産生分泌低下が、高度なアストログリオーシスを引き起こす要因となるという着想に至った。 そこで本研究は、「カテプシンHを切り口」とし、ミクログリアのToll様受容体3(TLR3)-IFN-betaシグナリングを介したアストログリオーシス制 御機構を明らかにすることを目的とする。さらに、損傷脳の機能再生・回復技術の開発に繋がる物質的基盤を確立したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ミクログリアのTLR3・IRF3・IFN-betaシグナリングにおけるカテプシンHの役割についての解析を行った。培養ミクログリアを用いた実験では、野生型ならびにカテプシンH欠損マウスの脳から調整したミクログリアを無刺激ならびにTLR3合成リガンドであるポリ(I:C)で刺激した後、可溶性分画を用いたイムノブロット法によりTLR3ならびにリン酸化IRF3の定量解析を試みた。しかし、ミクログリアの可溶分画においてTLR3ならびにリン酸化IRF3の検出は困難であった。そこで、野生型ならびにカテプシンH欠損マウスのスプレノサイト(大部分は脾臓マクロファージ/樹状細胞)を調整し、解析を行った。その結果、TLR3はポリ(I:C)で刺激した野生型スプレノサイトにおいてのみ検出された。また、リン酸化IRF3もポリ(I:C)で刺激した野生型スプレノサイトにおいてのみタンパク量の有意な増大が認められた。マウス個体を用いた実験では、野生型ならびにカテプシンH欠損マウスに低酸素/脳虚血を負荷し、灌流固定を行った後、脳切片を作成した。抗TLR3抗体ならびに抗リン酸化STAT1抗体を用いた蛍光免疫染色により、野生型マウスの低酸素/脳虚血を負荷した同側大脳皮質でのみTLR3ならびにSTAT-1の蛍光シグナルが検出できた。
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今後の研究の推進方策 |
低酸素/脳虚血に伴い活性化したミクログリアの産生分泌するIFN-betaが;、ミクログリア細胞死(活性化誘導細胞死)を抑制することが示唆される。そこでIFN-beta・IFN-alpha/beta受容体シグナリングのミクログリア細胞死(活性化誘導細胞死)に及ぼす影響を解析する。具体的には、MG6ミクログリアにリコンビナントIFN-beta存在下あるいは非存在下で実験的脳虚血を負荷する。アネキシンV-FITCならびにヨウ化プロピジウムを用いてMG6ミクログリアを染色した後、フローサイトメーターによりアポトーシス細胞を定量解析する。さらにMG6ミクログリアより抽出したtotal RNAに対してCAGE法による網羅的遺伝子解析を行い、細胞死を誘導する原因分子を同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品(特に試薬)の価格と実際の納品価格に生じた差額を次年度に持ち越した。次年度に購入する消耗品の経費に充てる予定である。
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