研究課題
脳損傷に伴って生じる高度なアストログリオーシスはニューロンの変性脱落に伴う脳萎縮を抑制し、炎症が脳全体に広がるのを防ぐバリアとしての役割を果たすと考えられる。しかし一方で、神経回路の再生・修復を物理的に妨げ、毒性物質を放出することで脳機能の回復を抑制するという指摘もある。このようにアストログリオーシスは二面性を持つため厳密に制御されていると考えられ、アストログリオーシスの脳損傷後の脳機能回復における意義を解明することは極めて重要である。2021年度ならびに2022年度の研究において、カテプシンH欠損マウスではニューロン死に伴い高度なアストログリオーシスが形成されることを明らかにした。具体的には、野生型マウスでは低酸素/脳虚血負荷に伴いアストログリオーシスが軽度で、高度な脳萎縮が生じた。一方、カテプシンH欠損マウスでは低酸素/脳虚負荷に伴い高度なアストログリオーシスが形成され、軽度な脳萎縮しか生じなかった。詳細な解析の結果、低酸素/脳虚血に伴い活性化したミクログリアにおいてカテプシンH依存的に成熟化したトル様受容体3(TLR3)を介してインターフェロン-beta(IFN-beta)が産生されることを明らかにした。さらに、ミクログリアから産生分泌されたIFN-betaが、IFN-alpha/beta受容体を介して貪食性ミクログリアの生存維持ならびにアストロサイトの増殖抑制に関与することを突き止めた。2023年度は、低酸素/脳虚血負荷後の野生型ならびにカテプシンH欠損マウスの認知機能を比較することでアストログリオーシスの脳機能回復に及ぼす影響についての解析を試みた。具体的には、低酸素/脳虚血負荷後、野生型ならびにカテプシンH欠損マウスの自発運動量ならびに新規物体認知テストによる解析を行なった。しかし、野生型ならびにカテシンH欠損マウスにおいて有意な差は認められなかった。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件)
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