研究課題/領域番号 |
21K06393
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田中 洋光 京都大学, 理学研究科, 助教 (30705447)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | シナプス伝達 / シナプス小胞 / エンドサイトーシス / 全反射蛍光顕微鏡 / 海馬神経細胞 |
研究実績の概要 |
シナプスにおける神経情報伝達は、活動電位の到達直後にシナプス前終末から行われ、高頻度の活動電位にも対応する。この情報出力を可能にするために、シナプス前終末にはタンパク質が密に集積した「アクティブゾーン」と呼ばれる細胞膜領域があり、シナプス小胞を効率的に開口放出して再構成する仕組みがあると考えられている。しかしながら、アクティブゾーン周辺でどのようにシナプス小胞が放出して取り込まれ、機能的な小胞が再構成されるのかは未だ明らかでない。研究代表者はこれまで、神経伝達物質受容体の動態やシナプス小胞の開口放出を、全反射顕微鏡を用いて高時空間分解能でライブイメージングできる独自の実験系を構築してきた。
本研究では、この実験系に改良したU字型ガラス管を新たに組み合わせることで、エンドサイトーシスされた直後のシナプス小胞の構成膜タンパク質を可視化することに成功した。具体的には、ガラス面上にラット海馬の神経細胞を初代培養して、シナプス前部の形成を誘導する接着分子を用いてアクティブゾーン様構造を形成させた。神経細胞に、pH感受性GFPであるSEPを融合させた小胞構成膜タンパク質Synaptophysinを、遺伝子導入により発現させた。そして活動電位を誘発する電場刺激を細胞に加えて、シナプス小胞を放出させて、U字型ガラス管を用いて細胞外pHを一過的かつ局所的に変えることで、Synaptophysinのエンドサイトーシスをライブイメージングした。解析の結果、刺激後のタイミングによってアクティブゾーン周辺での取り込み形態が複種類実在することを、生細胞で初めて明らかにした。これにより、高速の情報出力が実現される神経情報伝達機構の解明に貢献した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的通り、アクティブゾーン周辺でどのようにシナプス小胞が放出して取り込まれるのかを明らかにできた。本研究の成果は、日本神経科学学会における口頭発表に採択され、論文投稿に向けても準備中である。以上の状況から、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究により個々のシナプスにおいて、シナプス小胞の放出や取り込み形態は一様ではなく、おそらく神経活動の状況やシナプスの性質によって異なることが明らかになりつつある。そこで今年度では、機能的な小胞が再構成される実態について研究する。具体的には、小胞の放出と取り込みの相関や、アクティブゾーンの特性と取り込み形態の関連について調べる。ライブイメージング法または電気生理学的手法を用いて、小胞の取り込み形態や再構成に関して、何が重要な要因なのかを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度以降に、実験に必要な比較的高価の消耗品、備品を購入予定のため、一部繰越した。
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