研究実績の概要 |
近年、我々はマウス大脳皮質のさまざまな皮質領野において第5層の主要なニューロンがサブタイプ得意的にカラム状のクラスター(以下、微小カラム)を形成していることを見出した(Maruoka et al., Science, 2017)。微小カラムは脳表に平行な2次元平面上で六方格子状に配列し、また生理学的解析から同一の微小カラムは機能単位として動作することを明らかにした。微小カラムはヒト脳でも観察されることから非常に重要な機能モジュールと推定されるが、その発生機構を不明である。微小カラムの発生機構について同一の微小カラムに属するニューロンはそれぞれ異なる放射状グリア細胞から新生したニューロンで構成されている(Maruoka et al., J. Neurosci., 2011)。よって同一の放射状グリア細胞由来のニューロン群がradial migrationにより集合して微小カラムを形成するという単純なモデルは否定される。そのため本研究課題では微小カラムの発生機構を明らかにすることを目指した。透明化された胎生17日齢終脳の全脳サンプルから、皮質下投射ニューロンと推定されるCTIP2(+)ニューロンの三次元座標を取得し解析することにより、胎生17日齢ですでに細胞タイプ特異的微小カラムが存在することを明らかにした。一方、対側投射ニューロンと推定されるCTIP2(-)Satb2(+)ニューロンは同時期で微小カラム構造は示さなかった。また放射状グリア細胞を蛍光標識することで特定の放射状繊維近傍にCTIP2(+)ニューロンが局在していることも明らかにした。このCTIP2(+)ニューロンの放射状繊維への特異的局在の意義を検討した結果、放射状グリア細胞の細胞周期と相関することを示す知見を得た。現在、これらの結果をまとめた論文を投稿準備中である。
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