研究課題
本研究は、感覚野と運動野を直接かつ重層的に結ぶ連合回路が皮質-基底核-視床-皮質(CBTC)ループと皮質-視床高次核-皮質ループ(CTCループ)を結ぶ機能回路に相当すると仮定し、重層的連合回路の各層が伝達する情報成分と、運動野局所回路との接続様式を解明することを目的とする。マウス1次体性感覚野(S1)から1次運動野(M1)への三重層の並列連合回路をモデルに、連合回路を層特異的に標識するために独自に作製したノックイン・マウスと種々のアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターあるいは子宮内電気穿孔法を組合わせて用いることにより、同一個体内で各層の入出力回路の構造を比較解析する。実験計画としてはまず、S1の連合ニューロンへの入力細胞の同定、特に視床POm核後部や対側S1からの入力について、経シナプス性のAAV1-hSyn-Creや、経シナプストレーサーであるWGA-Creなどを用いて解析するとともに、三層の連合回路を識別的に標識してM1での軸索投射パターンを比較解析、および、M1における後シナプス細胞の同定・比較を行うものである。令和3年度は各種AAVベクターの調製を進めつつ、子宮内電気穿孔法およびAAVベクターを用いて経シナプストレーサーを発現させる実験を行い、投射領域によっては後シナプス細胞を標識することができたが、より検出感度を上げる必要があり、系の最適化を進めている。しかし、動物実験施設の改修に伴い、年度の終盤では現在の仮施設での動物実験がほとんどできない状況が続いたため、当初予定と比べると全体の進行はやや遅れ気味である。
3: やや遅れている
動物施設の改修に伴い、年度終盤にAAVの接種実験を行えない期間が4か月程度あり、系の最適化が予定通りには進められなかったため。
動物施設の実験室の立ち上げが完了次第、AAV実験を精力的に進めることによって、1次体性感覚野S1の各層から1次運動野M1への投射パターンとM1での後シナプス細胞を比較する。
動物実験施設の改修により動物実験のできない期間が4か月程度あったことと、改修・移転の遅れにより改修に伴う動物のSPF化が令和3年度中には行えず、その費用の支出が遅れていたが、繰り越し分は令和4年度の序盤に終わる予定のSPF化に使用し、令和4年度分として請求した分は当初予定の研究遂行に使用の予定である。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Cerebral Cortex
巻: 31(11) ページ: 5225-5238
10.1093/cercor/bhab153
Journal of Neurochemistry
巻: 159(4) ページ: 778-788
10.1111/jnc.15505
Journal of Neuroscience
巻: 41(22) ページ: 4795-4808
10.1523/JNEUROSCI.0367-20.2021
Human Genetics
巻: 140(2) ページ: 277-287
10.1007/s00439-020-02198-4