性的二形領域は神経の形態や細胞数、遺伝子発現などに顕著な性差がみられる領域だが、その機能を実証した研究はほとんどないが、その性質から性特異的な行動発現や生理機能の調節に深く関わる領域と考えられている。これまでの我々の予備的研究から複数の性的二形が見出されており、本研究ではその機能解明に取り組んでいる。 今年度はこれまで見出されてきた性的二型細胞群における、偽型狂犬病ウイルスを用いた逆行性単シナプストレーシングと、Gcampを用いたin vivoカルシウムイメージング、光遺伝学を用いた行動操作実験に取り組んだ。 偽型狂犬病ウイルスを用いた逆行性単シナプストレーシングでは、高タイターな狂犬病ウイルスを超遠心を用いずに精製する手法を見出し、神経細胞に感染させることに成功した。しかしながら、逆行性感染するための狂犬病ウイルスGタンパクに異常があり、逆行性感染には成功していないため、現在も継続中である。 Gcampを用いたin vivoカルシウムイメージングではグリンレンズのマウス脳への埋め込みと細胞レベルイメージングに成功したものの、グリンレンズによるマウス脳へのダメージが大きく性行動発現の大きな障害になってしまった。このため、グリンレンズによるイメージングは取りやめ、より侵襲の少ない光ファイバーによるイメージングに切り替えて実験を継続している。 光遺伝学を用いた行動操作実験ではChR2をMPOAに発現させ、青色光で即時的に神経活動を促進することで雄マウスの性行動に変化があるかを検討した。その結果、興味深いことに青色光照射から10分経過してもマウスの性行動が亢進することが明らかとなった。また、このような効果はMPOAの下流の一つであるVTAにおける神経末端の活性化でも確認できた。
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