研究課題/領域番号 |
21K06418
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
岡田 研一 北海道大学, 医学研究院, 助教 (80790956)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 行動決定 / 線条体 / 大脳基底核ループ / 霊長類 / 眼球運動 |
研究実績の概要 |
線条体の神経活動が大脳皮質-基底核ネットワークの機能結合の素早い変化によって動的に制御されているとの仮説を検証すべく、研究を行なっている。初年度の成果として、短い時間スケールでの状況適応的な行動として試行毎に示される指示(CUE)に従って覚醒サルに眼球運動課題を行わせた際に、線条体LFPのβ成分の強さが試行毎のルールに応じて変化することを確認しており、これは大脳皮質-基底核ネットワークの状態変化を反映していると考えられる。課題遂行中の大脳皮質-基底核ネットワークの機能結合を調べるために、補足眼野を同心円型双極電極を用いて局所的に刺激し、線条体の神経活動・刺激応答をタングステン電極または多点電極で記録した。 補足眼野への微小電流刺激により、線条体LFPの刺激誘発応答と短潜時の刺激誘発スパイクを再現性よく記録することができた。刺激直後の誘発応答の大きさはその後の誘発スパイクの有無と関係しており、線条体への入力を反映するものと思われた。そこで誘発応答の大きさを大脳皮質-基底核ネットワークの機能結合の指標とし課題中の変化を調べたところ、課題遂行中には試行間インターバルに比べて誘発応答が大きかった。また、課題中の詳細な時間変化を調べると、誘発応答は CUEの呈示直後に最も大きかった。これらの結果は、課題遂行中の数秒程度の時間スケールでの機能結合変化を反映しているものと考えられる。 また、刺激誘発スパイクの起こりやすさにネットワーク状態が関係していることを見出した。ネットワーク状態の指標として刺激時のβ成分の強さや位相と誘発スパイクとの関係を調べたところ、特定の位相での刺激は誘発スパイクを引き起こしやすく、またその関係はβ成分がある程度の強さを持つ時にだけ見られることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では最終年度の課題としていた大脳皮質-基底核ネットワークの機能結合変化の検証について、大脳皮質の電気刺激と線条体の神経活動記録とを組み合わせた実験系を確立し、研究を進めることができている。大脳皮質刺激に対する線条体LFPの刺激誘発応答を指標として、課題条件に応じた機能結合の変化を確認できた。また、β成分の強さや位相という大脳皮質-基底核ネットワークの状態に応じて機能結合が変化することも見出した。 初年度に確認した課題条件に応じたβ成分の変化と合わせて、大脳皮質-基底核ネットワークの状態変化と機能結合との関係が明らかになりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
大脳皮質-基底核ネットワークの機能結合が線条体LFPのβ成分の強さや位相に応じて変化することが確認できたため、実際にこの機能結合変化によって線条体の神経活動が動的に制御されているかを明らかにしたい。そのため、課題条件に応じた機能結合変化や、LFPとスパイクの相関関係の解析を進めていく。また、β成分の強さや位相の変化に伴う機能結合変化がどのような空間スケールで起こっているのかを調べるため、多点電極で記録したデータの解析を進める。最終的に、これらの成果を論文として公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
大学内共同利用の機械工作室を活用し、実験に必要な物品の入手にかかる費用を抑えることができた。 未使用額を最終年度の物品費として活用したい。
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