研究課題
線条体の状況に応じた柔軟な神経活動変化が、大脳皮質-基底核ネットワークの機能結合の素早い変化によって動的に制御されているとの仮説を検証すべく、研究を行なった。前年度までの成果として、機能結合変化を直接的に調べるべく、眼球運動課題遂行中のサル補足眼野や前頭眼野を同心円型双極電極を用いて局所的に刺激し、線条体尾状核の神経活動・刺激応答をタングステン電極または多点電極で記録する実験系を構築し研究を行ってきた。また、新たに刺激部位近傍の硬膜上にボール電極を置くことで皮質脳波を同時記録し、ネットワークの同期状態の指標とした。サルが試行毎に示される指示により行動ルールを切り替えて眼球運動課題を行なっている際に、ルールに応じた線条体LFPのβ成分変化と、皮質脳波と線条体LFPのコヒーレンス変化を確認し、大脳皮質-基底核ネットワークの状態変化を定量化することができた。課題遂行中の様々なタイミングで補足眼野への微小電流刺激を行い、短潜時の刺激誘発スパイクと線条体LFPの刺激誘発応答を記録した。β成分変化の機能的意義を明らかにすべく、刺激によるスパイク誘発確率と線条体LFPのβ成分の関係を解析したところ、刺激時のβ成分の強さや位相によりスパイク誘発確率の変動がみられた。また、こうした関係は皮質脳波の律動成分との間ではみられなかった。また、LFP誘発応答の大きさは誘発スパイクの有無と関係しており、EPSPを反映していると考えられた。そこで、刺激誘発応答を指標として課題条件と機能結合変化との関係を詳細に解析したところ、前試行からルールを切り替える事が必要な場面で機能結合の強化がみられ、機能結合変化による行動ルール切り替えへの寄与が示唆された。
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NeuroImage
巻: 285 ページ: 120479~120479
10.1016/j.neuroimage.2023.120479