研究課題/領域番号 |
21K06420
|
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
伊澤 佳子 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (40372453)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 前頭眼野 / 眼球運動 / 頭部運動 / 随伴発射 / 注視 |
研究実績の概要 |
頭部運動は、眼球運動と協調して視線の安定に関わる。我々は最近サルにおいて、頭部固定下に大脳前頭眼野刺激を行い頭部トルクと眼球運動の同時記録を行うことにより、前庭動眼反射から分離して、頭部の運動活動のcorollary discharge(随伴発射)により生じたと考えられる眼球運動を見出した。これまでに、前頭眼野の随伴発射信号が眼球と頭部運動制御に果たす役割は未だ知られていない。本研究は、前頭眼野が随意性頭部運動に伴う代償性眼球運動のための随伴発射信号の起源であることを同定し、その役割を明らかにすることを目的とする。解析は、サルの前頭眼野において電気生理学的・解剖学的手法を総合して進めた。 令和4年度はまた、訓練したサルにおいて、視運動性眼振の制御についての前頭眼野の役割りについて解析を進めた。視運動性眼振は、ランダムドットパターンを水平方向に回転することにより誘発した。このような視運動性眼振が誘発されている時に、眼振の急速相と緩徐相に対する前頭眼野の微少電流刺激効果を系統的に調べた。まず電気誘導性サッケードが低い閾値で誘発されるような典型的な前頭眼野の部位では、その閾値下の刺激によって眼振の急速相と緩徐相の発現が同側性に強く抑制されることがわかった。さらに、前頭眼野の中でprearcuate gyrusの弓状溝下行脚に面した限局した部位では、刺激によって眼振の急速相と緩徐相の発現が、刺激と同側向きも対側向きも両側性に強く抑制されることがわかった。この抑制部位には、注視中に強い持続発火を示す注視ニューロンが数多く存在する。以上の結果は、前頭眼野は眼球運動の発現に関わるだけでなく、反射性眼球運動の発生を抑制して注視を維持する働きがあることを示している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は、反射性眼球運動である視運動性眼振の制御についての前頭眼野の役割りについて解析を進めることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、前頭眼野の注視ニューロンの注視中の活動と視運動性眼振中の活動の関係について解析を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
理由:年度内に納入予定であった物品を、次年度始めの施設の空調工事後に設置することにした。 使用計画:計画通り、実験動物の費用、電極の費用、薬品の費用および研究成果発表の費用等に使用する。
|