• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2022 年度 実施状況報告書

オキシトシン蛍光イメージングにより迫る脳内幸せシグナル動態

研究課題

研究課題/領域番号 21K06421
研究機関大阪大学

研究代表者

稲生 大輔  大阪大学, 大学院医学系研究科, 特任講師(常勤) (40721981)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワードオキシトシン / 蛍光イメージング / 神経伝達物質
研究実績の概要

脳内で“幸せ”という感覚は何に起因するのであろうか? これまでに幸せを感じると脳の中では、オキシトシンと呼ばれる“幸せホルモン”が増加することが示唆されてきている。しかしながら、既存手法を用いて、生きた動物の脳内のオキシトシン動態を精度よく計測することは困難である。そこで、脳内におけるオキシトシン動態を蛍光イメージングにより高感度測定ための新規技術開発を行ってきた。オキシトシン受容体の細胞内ドメインにGFPを挿入したキメラタンパク質にランダム変異を導入し指向性分子進化を施すことで、オキシトシン結合により蛍光強度が大きく変化する世界初のオキシトシン蛍光センサーを開発することに成功した。本蛍光センサーを、アデノ随伴ウイルスにより生きたマウス脳内に導入し、ファイバーフォトメトリー法によるin vivo脳内オキシトシン動態測定を行った。本計測により自由行動下の成体マウスにおいて、脳内でオキシトシン濃度が2時間程度の周期で振動していること (オキシトシン振動)が明らかとなった。オキシトシン振動は摂食と関連することが解析結果から見えてきた。そこでマウスを絶食させた。興味深いことに、絶食中においてオキシトシン振動は消失せず、シグナルパターンの乱れが観察された。この新規現象を申請者らは“オキシトシン乱流”と名付けた。オキシトシン乱流は再度摂食を行うことで消失し、正常なオキシトシン振動のパターンが観察された。詳細の解明は今後の課題であるが、オキシトシン乱流は脳内における食欲を感知・制御する機構と関連する可能性が推測される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

前年までに開発した高感度オキシトシン蛍光センサーを、生きたマウスの脳に導入し、様々な条件においてin vivo測定を進めている。昨年“オキシトシン振動”という新規現象を発見するに至ったが、今年度は“オキシトシン乱流”というさらに別の新規現象も発見した。本結果は申請者らのオキシトシン蛍光センサーの有用性を強く支持すると考えられる。

今後の研究の推進方策

今年度も新規オキシトシン蛍光センサーを用いたin vivo脳内オキシトシン動態測定に成功している。次年度以降も様々な刺激条件下での脳内オキシトシン動態測定を進めていき、当該研究分野に新たな地平を切り開いていきたい。

次年度使用額が生じた理由

COVID-19やウクライナ情勢の影響により一部の物品の納品に大幅な遅れが生じたのに加え、論文の英文校閲や掲載料への助成を所属機関や他の助成機関より受けたため、次年度への繰り越しが生じた。繰り越し金を合わせた最終年度の予算を駆使して、残りの研究をさらに加速させていきたい。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (2件) (うちオープンアクセス 2件、 査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Prediction of the emotional states from facial expression in mice using a deep learning-based image analysis2023

    • 著者名/発表者名
      Yudai Tanaka, Takuto Nakata, Hiroshi Hibino, Masaaki Nishiyama, Daisuke Ino
    • 雑誌名

      bioRxiv

      巻: 2023.02.17 ページ: 528923

    • DOI

      10.1101/2023.02.17.528923

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] A fluorescent sensor for real-time measurement of extracellular oxytocin dynamics in the brain2022

    • 著者名/発表者名
      Daisuke Ino, Yudai Tanaka, Hiroshi Hibino, and Masaaki Nishiyama
    • 雑誌名

      Nature Methods

      巻: 19 ページ: 1286-1294

    • DOI

      10.1038/s41592-022-01597-x

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 可視化により探る 多様な細胞外シグナル動態2022

    • 著者名/発表者名
      稲生 大輔
    • 学会等名
      生理研研究会, シナプス研究会2022
    • 招待講演
  • [学会発表] オキシトシンと様々な脳内神経修飾物質のリアルタイム解析を実現する蛍光センサーの開発2022

    • 著者名/発表者名
      稲生 大輔
    • 学会等名
      JPW2022 (第96回 日本薬理学会年会)
  • [学会発表] A fluorescent sensor for real-time measurement of extracellular oxytocin dynamics in the brain2022

    • 著者名/発表者名
      稲生 大輔
    • 学会等名
      Neuro2022 (第45回 日本神経科学大会)
  • [学会発表] 可視化により見えてきた複雑な脳内オキシトシン動態2022

    • 著者名/発表者名
      稲生 大輔
    • 学会等名
      生理研研究会, 細胞システム理解のためのシグナル応答原理解明の最前線

URL: 

公開日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi