研究課題
脳内で“幸せ”という感覚は何に起因するのであろうか? これまでに幸せを感じると脳の中では、オキシトシンと呼ばれる“幸せホルモン”が増加することが示唆されてきている。しかしながら、既存手法を用いて、生きた動物の脳内のオキシトシン動態を精度よく計測することは困難であった。そこで、脳内におけるオキシトシン動態を蛍光イメージングにより高感度測定のための蛍光センサーの開発を行った。本蛍光センサーを、アデノ随伴ウイルスにより生きたマウス脳内に導入し、ファイバーフォトメトリー法によるin vivo脳内オキシトシン動態測定を行った。すると急性ストレスを与えた時には秒単位でピークに達するような非常に速い反応、社会報酬刺激を与えた時には、分スケールの時定数で上昇するようなややゆっくりとしたオキシトシン上昇、というように刺激の種類によって様々な時定数でオキシトシンが上昇していることが判明した。また、自由行動下の成体マウスにおいて、脳内でオキシトシン濃度が2時間程度の周期でゆっくりと振動している(オキシトシン振動) という新しい脳内オキシトシン動態も明らかとなった。さらに、マウスを絶食させたところ、絶食中においてオキシトシン振動は消失せず、シグナルパターンの乱れ (オキシトシン乱流)が観察された。オキシトシン振動やオキシトシン乱流をマウスの様々な生体パラメーターと同時計測を行い解析したところ、摂食行動やマウスの代謝関連パラメーターと深く関連することが見えてきた。すなわち、脳内の幸せホルモン オキシトシンは、摂食・代謝と連動して動物の心理状態をコントロールしているシナリオが見えてきた。
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PLoS ONE
巻: 18 ページ: e0288930
10.1371/journal.pone.0288930. eCollection 2023.
Heliyon
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