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中枢概日時計として機能する視交叉上核（SCN）は、共発現する神経ペプチドによって分類される複数種のGABA作動性神経で構成される。個々の神経細胞は時計遺伝子の転写翻訳ループにより自律的に概日リズムを生じるが、各タイプの細胞が群内及び群間で接続して組織化されることにより、SCN回路は安定した時刻情報を生成し、外界の明暗リズムに対する同調機能を発現する。しかし、その回路の作動原理は未だ十分に解明されていない。本研究では、SCN神経間のGABA作動性伝達の機能的性質を調べ、明暗サイクルに対する同調や日長の符号化に関する機能的役割を明らかにすることを目的とした。
実験では主にAVP神経から特異的にGABA放出能を欠損させた遺伝子改変マウスを解析した。AVP神経がGABA伝達を介してSCN回路の神経活動を制御し、適切な時間帯に動物の行動をオンとオフに切り替える役割を果たすことを明らかにした。in vivo記録によりSCN回路の神経活動を観察すると、正常マウスでは昼に高く、夜に低い単峰性のリズムを示すが、改変マウスは夜にもピークが現れる二峰性のリズムを示し、マウスの自発行動はその谷間の時間帯に現れることが分かった。この現象を細胞レベルで解析するため、脳スライス標本において穿孔型多点電極アレー記録を行い、個々の神経について電気活動の概日リズムを観察した。正常マウスにおいては昼の時間に活動を高める細胞が多く観察される一方で、改変マウスにおいては逆位相で活動する細胞群も出現することが観察された。この他、AVP神経由来のシナプス伝達を光遺伝学的手法により特異的に活性化し、別のタイプの神経で応答を観察する実験系を確立した。また、AVP神経より電気記録を行い、マウスの休息期にあたる昼の時間帯に、膜電位、活動電位の頻度、シナプス伝達効率が高くなるという電気的性質に日内変動が生じることが分かった。
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