研究課題/領域番号 |
21K06427
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
坪井 大輔 藤田医科大学, 総合医科学研究所, 講師 (80584672)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 細胞内シグナル伝達 / KCNQ2 / リン酸化 / 情動行動 |
研究実績の概要 |
脳深部領域に位置する側坐核(Nucleus Accumbens, NAc)は、報酬学習などの情動行動において重要な役割を担っている。線条体/側坐核を構成する中型有棘神経細胞は大脳皮質からの興奮性入力を感受するが、自身の膜興奮性の低さから発火し難い状態にある。ドパミンは当該神経細胞を活性化させることで報酬学習を促進させていると考えられている。しかしながら、ドパミンが関わる神経細胞の興奮性と報酬学習のメカニズムは十分に理解されていませんでした。これまでに研究代表者らは、ドパミンが受容体を介してPKA/MAPKシグナル伝達を惹起させ神経膜の興奮性を高めることで、入力に対する発火頻度・閾値を上昇させていることを見出していた。しかしながら、PKA/MAPK経路が如何にして膜興奮性を制御するかについて分子レベルでは未だ理解できていない。最近、代表者らはリン酸化プロテオミクス解析から新規MAPKリン酸化基質として、膜興奮性を制御する電位依存性カリウムチャネルKCNQ2/Kv7.2を同定した。本研究ではKCNQ2が関わる細胞興奮性の分子基盤を解明するとともに、KCNQ2チャネル活性に着目した精神疾患の新たなモニタリング系の開発を目指した。本年度で研究代表者は、質量分析装置を用いたリン酸化プロテオミクス解析によりドパミンに制御されるKCNQ2リン酸化部位を同定するとともに、当該リン酸化部位を特異的に認識する抗リン酸化抗体を作製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電位依存性カリウムチャネルKCNQ2がドーパミンで制御されることを見出した。またドーパミンがERKを介してKCNQ2のリン酸化を調節することを明らかにした。これらの進捗状況から研究代表者は、策定した研究計画の一部を達成できたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
KCNQ2リン酸化修飾がマウス報酬行動に関与するかについて検討するため、野生型KCNQ2、またはリン酸化部位欠損KCNQ2変異体を用いてKCNQ2コンディショナルノックアウトのレスキュー実験を計画している。これらの解析から情動行動の分子基盤について解明を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
リン酸化解析が想定以上に進捗したため、当該解析に使用する消耗品で節約が可能になったため。次年度のマウスを用いた薬理行動学的な解析を進めるため、繰越額を充当する。
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