今後の研究の推進方策 |
申請者らは意欲や報酬シグナルとして作用する神経伝達物質ドーパミンの下流でリン酸化される蛋白質を100種類以上同定した (Nagai et al, Neuron, 89(3), 2016)。そして、報酬学習においてドーパミン1型受容体の活性化で惹起されたMAPKシグナル伝達が、KCNQ2電位依存性チャネルをリン酸化し、神経細胞の興奮性を促進することを見出した (Tsuboi et al, Cell Rep, 40(10), 2022)。ヒトの臨床解析で、電位依存性カリウムチャネルKCNQが統合失調症やうつ病、強迫性障害などの精神疾患の病因・病態に関与しているとの報告がある。これらの所見から、KCNQチャネルが広範な精神疾患の病態に深く関わっていることが示唆される。とりわけ、統合失調症やうつ病の克服は社会的に重要な未解決の医療ニーズである。今後は様々な精神疾患モデルマウスを用いてKCNQ2チャネルの活性を分子細胞生物学的、および電気生理学的に評価することで、当該疾患の分子病態におけるKCNQの役割について明らかにしていくことが重要である。
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