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2021 年度 実施状況報告書

グルタミン酸シグナルによる忌避学習・記憶の制御機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 21K06428
研究機関藤田医科大学

研究代表者

船橋 靖広  藤田医科大学, 総合医科学研究所, 講師 (00749913)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワードグルタミン酸 / NMDA / 忌避行動 / 学習・記憶 / カルシウム / CaMKII / Rho-kinase
研究実績の概要

本年度は、忌避学習・記憶におけるグルタミン酸-CaMKⅡ-RhoA-Rho-Kinase経路の役割を明らかにするため、忌避刺激としてマウス足裏への電気ショックを用いた受動回避試験を行った。マウスに忌避刺激を与えた際、側坐核のドーパミンD2受容体を発現する中型有棘神経細胞(D2R-MSN)内のCa2+動態を解析するため、Cre依存的にGCaMP6を発現するアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターをAdora2a-Creマウスの側坐核に注入することで、D2R-MSN特異的にGCaMP6を発現させた。ワイアレスファイバーフォトメトリーにてin vivoカルシウムイメージングを行った結果、忌避刺激の直後にD2R-MSNの細胞内で一過性にCa2+濃度が上昇することを見出した。このCa2+濃度上昇はNMDA受容体阻害剤(MK-801)の腹腔内投与により抑制された。次に、忌避刺激後のマウスの側坐核を採取し、ウェスタンブロットにてリン酸化シグナル解析を行った。忌避刺激後にARHGEF2(CaMKⅡ基質)やMYPYT1(Rho-Kinase基質)のリン酸化が上昇することを明らかにした。忌避刺激によるMYPT1のリン酸化は、Rho-kinase阻害剤(fasudil)の腹腔内投与により抑制された。よって、忌避刺激が側坐核において、NMDA受容体を介し、CaMKⅡ-RhoA-Rho-Kinase経路を活性化することが示唆された。次に、Rho-kinaseが忌避学習・記憶に関与するかどうかを調べるために、野生型マウスにRho-kinase阻害剤(fasudil)を腹腔内投与し15分後に、忌避刺激を与え、翌日に受動回避試験を行った。対照マウスと比較してfasudil投与マウスでは学習・記憶能力が優位に低下した。したがって、Rho-kinaseが忌避学習・記憶に関与することが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2021年度は、当初予定していた以下の3つの項目について解析を行った。
1. マウスの忌避行動時のD2R-MSNの発火動態解析:忌避刺激時における側坐核のD2R-MSNのCa2+動態を解析するため、Cre依存的にGCaMP6を発現するAAVベクターをAdora2a-Creマウスの側坐核に注入することで、D2R-MSN特異的にGCaMP6を発現させた。ワイアレスファイバーフォトメトリ―を用い、自由行動下でin vivoカルシウムイメージングをする系を確立した。忌避刺激の直後にD2R-MSNの細胞内にNMDA受容体を介し、Ca2+濃度が一過性に上昇することを見出した。
2. マウスの忌避行動時とリン酸化シグナル解析:忌避刺激後のリン酸化シグナル解析を行い、ARHGEF2(CaMKⅡ基質)やMYPYT1(Rho-Kinase基質)のリン酸化が上昇すること、MYPT1のリン酸化がRho-kinase阻害剤(fasudil)の腹腔内投与により抑制されることを見出した。
3. マウスの忌避学習・記憶の解析:受動回避試験を行い、Rho-kinase阻害剤(fasudil)投与マウスでは学習・記憶能力が低下することを見出した。
以上のことより、本年度研究開始時に立てた実施計画と目標はほぼ達成出来たと考える。

今後の研究の推進方策

2022年度は、以下の2つの項目について、解析を行う予定である
1. スパインの形態可塑性の解析
Rho-Kinaseの新規基質として同定したShank3やDlg2はグルタミン酸受容体の足場蛋白質としてシナプス可塑性を制御していることが知られているが、Rho-Kinaseがこれらの蛋白質のリン酸化を介し、シナプス可塑性を制御するのかは不明である。2022年度は、Rho-kinaseのドミナントネガティブ変異体やShank3やDlg2のリン酸化変異体を発現するAAVを側坐核のD2R-MSNに発現させ、樹状突起スパインの形態解析を行う。また、Rho-KinaseやShank3のコンディショナルノックアウトマウスを用い、Rho-KinaseやShank3を側坐核のD2R-MSNで欠損させた際のスパインの形態解析を行う。さらに、培養神経細胞を用い、化学的に長期増強(LTP)を誘導しスパイン増大を引き起こした際のRho-kinaseのドミナントネガティブ変異体やShank3のリン酸化変異体の効果を検討する。
2. マウスの忌避学習・記憶の解析
Rho-KinaseやShank3が忌避学習・記憶に関与するかどうかをさらに検証するため、Rho-KinaseやShank3のコンディショナルノックアウトマウスを用い、側坐核のD1R-MSNやD2R-MSN特異的にRho-KinaseやShank3を欠損させ、受動回避学習試験を行う。また、受動回避学習試験において、忌避刺激後のマウスの側坐核を採取し、Shank3のリン酸化の変動を解析する。

次年度使用額が生じた理由

一部の試薬・消耗品に関して、調達方法の工夫により当初計画より経費節約が出来たため、次年度使用額が生じた。
次年度、シナプス形態可塑性解析及びマウス行動解析のための試薬、実験動物を購入するための消耗品費に充てる。また、論文投稿のための英文校正費や論文投稿費、成果発表のための学会参加費に充てる。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2021 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Muscarinic signaling regulates voltage‐gated potassium channel KCNQ2 phosphorylation in the nucleus accumbens via protein kinase C for aversive learning2021

    • 著者名/発表者名
      Faruk Md. Omar、Tsuboi Daisuke、Yamahashi Yukie、Funahashi Yasuhiro、Lin You‐Hsin、Ahammad Rijwan Uddin、Hossen Emran、Amano Mutsuki、Nishioka Tomoki、Tzingounis Anastasios V、Yamada Kiyofumi、Nagai Taku、Kaibuchi Kozo
    • 雑誌名

      Journal of Neurochemistry

      巻: 160 ページ: 325~341

    • DOI

      10.1111/jnc.15555

    • 査読あり
  • [雑誌論文] KANPHOS: A Database of Kinase-Associated Neural Protein Phosphorylation in the Brain2021

    • 著者名/発表者名
      Ahammad Rijwan Uddin、Nishioka Tomoki、Yoshimoto Junichiro、Kannon Takayuki、Amano Mutsuki、Funahashi Yasuhiro、Tsuboi Daisuke、Faruk Md. Omar、Yamahashi Yukie、Yamada Kiyofumi、Nagai Taku、Kaibuchi Kozo
    • 雑誌名

      Cells

      巻: 11 ページ: 47~47

    • DOI

      10.3390/cells11010047

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] NMDAによるCaMKII-RhoA-Rho-kinase経路の活性化が忌避学習を制御する2021

    • 著者名/発表者名
      船橋 靖広, Ahammad Rijwan Uddin, 張 心健, Hossen Emran, Faruk Md Omar, 許 伊凡, 黒田 啓介, 坪井 大輔, 西岡 朋生, 天野 睦紀, 永井 拓, 貝淵 弘三
    • 学会等名
      第95回日本薬理学会年会
  • [備考] 藤田医科大学 精神・神経病態解明センター 細胞生物学部門

    • URL

      https://www.fujita-hu.ac.jp/icbs/department/dept02.html

  • [備考] 藤田医科大学 医科学研究センター 神経・腫瘍のシグナル解析プロジェクト研究部門

    • URL

      http://www.fujita-hu.ac.jp/ICMS/research_category/res06-22054/index.html

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公開日: 2022-12-28  

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