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2021 年度 実施状況報告書

シナプス終末における分子クラウディングの動的変化とその生理的役割の解明

研究課題

研究課題/領域番号 21K06429
研究機関大阪医科薬科大学

研究代表者

江頭 良明  大阪医科薬科大学, 医学部, 助教 (80582410)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワードシナプス伝達 / 分子クラウディング / ライブイメージング / ゼブラフィッシュ / 神経筋接合部
研究実績の概要

神経機能の基礎をなすシナプス伝達は、シナプス終末という微小空間で多数の分子が密に関わりあう一連の反応により生じる。近年、細胞内でタンパク質などの高分子が混みあって存在する状態(分子クラウディング)が、個々の生体分子の機能に重要であることが明らかになってきた。特にシナプス終末では、相分離を起こすタンパク質が液滴状の構造体(非膜性オルガネラ)を形成し、内部に高密度のタンパク質複合体を集積していることが示されたことで、シナプス機能に分子クラウディングの果たす役割が注目されている。しかし、分子クラウディングとシナプス伝達の関係を評価する研究は依然手が付けられていない。そこで本研究では、イメージング技術を駆使して、シナプス終末での分子クラウディングの動的変化を明らかにするとともに、シナプス伝達に対するその生理的役割を解明することを目指す。
標本として、遺伝的操作が容易であり、かつ生理的環境でのライブイメージングに適したゼブラフィッシュ仔魚の神経筋接合部を用いた。分子クラウディングとシナプス伝達の両方をイメージングするために、運動ニューロンの細胞質に分子クラウディングセンサーとなるFRETプローブを、シナプス終末のシナプス小胞内にpH感受性の赤色蛍光タンパク質を発現したトランスジェニックゼブラフィッシュを作成した。脊髄神経細胞を連続発火させた際のFRETプローブとpHセンサーのライブイメージングを行ったところ、シナプス終末の分子クラウディングと融合するシナプス小胞の量(つまり放出される神経伝達物質量)の間に負の相関があることが示唆された。この結果は、シナプス前部の分子クラウディングが神経伝達に影響している可能性を示す。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究課題では、シナプス終末の分子クラウディングが、①神経の活動によって変化しうるかという点と、②逆に神経活動(シナプス伝達)に影響するかという、2つの点を検証することを目的としている。この2点をともに検証するために、分子クラウディングを測定するFRETプローブに加えて、シナプス小胞内にpH感受性の赤色蛍光タンパク質を同時発現するトランスジェニックゼブラフィッシュを作成した。シナプス伝達を可視化する目的では、pHluorinという緑色のpH感受性蛍光タンパク質がもっともよく使用されており、ゼブラフィッシュ神経筋接合部でもすでに実績があるが(Egashira et al., 2022 J Neurosci)、本研究ではFRETプローブと両立させるために比較的最近開発された赤色タンパク質(pHuji)を利用した。今回作成したトランスジェニックゼブラフィッシュにおいても、pHluorin同様にシナプス伝達を反映して蛍光強度の増大を観察することができたが、その変化量はpHluorinに比べると非常に小さいものであった。これまでの観察結果では、①の点については否定的である一方、②の点は分子クラウディングはシナプス伝達に負の影響を及ぼしているという可能性が示されている。したがって今後は、シナプス伝達の量をより正確に定量することが重要になってくるが、現状の赤色のpHセンサーではこの目的にかなわないことがわかった。そこで現在、シナプス伝達の定量により適したトランスジェニックゼブラフィッシュを新たに作成している。この魚のライン化にはまだ時間がかかるため、研究の進捗はやや遅れている。

今後の研究の推進方策

これまでの研究結果から、シナプス終末の分子クラウディングが膜融合するシナプス小胞の量に影響していることが分かってきている。しかし、分子クラウディングを測定するFRETプローブとシナプス伝達をライブイメージングするpHセンサーの両立は技術的に難しいことも判明した。そこで、この問題を克服し、シナプス伝達量をより正確に定量するために、HaloTagによる標識技術を取り入れたトランスジェニックゼブラフィッシュの作製を行っている。この魚では、シナプス小胞内にHaloTag分子が局在化するようにデザインされており、細胞外溶液に非膜透過型の蛍光標識HaloTagリガンドを投与すると、エキソ・エンドサイトーシスされたシナプス小胞のみを標識することができる。これにより、一定時間内に使用されたシナプス小胞の量、すなわち神経伝達の生じた量をきわめて感度よく検出することができる(Egashira et a., 2022 J Neurosci)。またHaloTagリガンドの標識蛍光分子は選択可能であるので、FRETプローブとの両立も可能である。今後はこの実験系を利用し、分子クラウディングの程度とシナプス伝達量の間に相関があるかどうかを、より厳密に検証していく予定である。

次年度使用額が生じた理由

蛍光フィルターユニット3セットを購入するために、やや余裕をもって50万円の前倒し申請を行い、残高が生じた。この繰越予算と合わせた次年度の予算は、前倒し請求の申請書に記載した通り、機械式マニピュレータ等の購入にあてる予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] Spontaneously recycling synaptic vesicles constitute readily releasable vesicles in intact neuromuscular synapses.2022

    • 著者名/発表者名
      Yoshihiro Egashira, Ayane Kumade, Akio Ojida, Fumihito Ono
    • 雑誌名

      The Journal of neuroscience

      巻: 42 ページ: 3523-3536

    • DOI

      10.1523/JNEUROSCI.2005-21.2022

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Quantitative Analysis of Presynaptic Vesicle Luminal pH in Cultured Neurons.2022

    • 著者名/発表者名
      Yoshihiro Egashira, Shutaro Katsurabayashi, Shigeo Takamori
    • 雑誌名

      Methods in molecular biology (Clifton, N.J.)

      巻: 2417 ページ: 45-58

    • DOI

      10.1007/978-1-0716-1916-2_4

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公開日: 2022-12-28  

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