研究課題/領域番号 |
21K06432
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛 |
研究代表者 |
今村 宰 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 生化学, 准教授 (40534954)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 脱髄疾患 / ドネペジル / iPS細胞 |
研究実績の概要 |
多発性硬化症(MS)は中枢神経系における代表的な脱髄疾患で、本邦での患者数は年々増加傾向にあり、早期の治療法開発が望まれている。これまでMSの病態解明や薬剤の治療効果は、主にマウス動物モデルを用いて行われてきたが、疾患の表現型や薬剤に対する応答性・副作用はマウスとヒトで大きく異なることが問題であった。近年、ヒトiPS細胞技術の進展により、患者由来iPS細胞から分化誘導した神経系細胞を用いることで中枢神経疾患の病態を生体外で再現できることが示されている。申請者はアルツハイマー病治療薬として認可されているドネペジル(DNP)にヒトiPS細胞由来オリゴデンドロサイト前駆細胞からオリゴデンドロサイトを効率的に分化誘導する新たな薬効を同定した。そこで本研究では、MS患者のiPS細胞から分化誘導したオリゴデンドロサイト系譜細胞を用いて、細胞病態を解明し、さらにこの病態モデルに対するDNPの有効性と作用機序を明らかにすることを目的としている。本年度は健常者の末梢血単核細胞から作製したiPS細胞を理研細胞バンクより複数株入手し、我々がこれまでに健常者皮膚線維芽細胞由来のiPS細胞(201B7株)を用いて確立したオリゴデンドロサイト分化誘導法が適応可能か検討した。ヒトiPS細胞からオリゴデンドロサイト前駆細胞を分化誘導後、免疫染色により分化状態を確認したところ、すべての株においてオリゴデンドロサイト前駆細胞マーカーの安定的な発現が認められた。一方で長期培養による成熟化の検討では、それぞれの細胞株間において髄鞘マーカーであるMBPの発現にばらつきがあることが明らかになり、培養条件の再設定の必要性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
末梢血単核細胞由来iPS細胞を用いて成熟オリゴデンドロサイトへの分化誘導法を確立しておく予定であったが、MBP陽性細胞は確認できたものの、細胞株間において分化誘導効率に変動が認められ、培養条件のさらなる検討が必要な状況である。そのため、疾患特異的iPS細胞を用いた研究を開始できていない。
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今後の研究の推進方策 |
健常者由来iPS細胞を用いて成熟オリゴデンドロサイトへの分化誘導条件を最適化した後、MS患者由来iPS細胞から疾患感受性細胞であるオリゴデンドロサイト前駆細胞および成熟オリゴデンドロサイトを分化誘導し、分化誘導効率、細胞増殖、アポトーシス、髄鞘形成能をそれぞれ健常対照群と比較することにより、分化過程でどの様な機能異常が生じているのか明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は健常者由来iPS細胞の分化誘導条件の検討のみに終始したため、iPS細胞の培養関連試薬(増殖培地、分化誘導培地、分化誘導用低分子化合物、成長因子、コーティング剤など)や培養ディッシュ製品の購入が次年度以降に持ち越す形となった。繰越金は次年度の助成金と合わせて、iPS細胞培養関連試薬や消耗品の購入費に充てる予定である。
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