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2023 年度 実施状況報告書

随伴発射機構の障害による幻聴の病態メカニズム解明

研究課題

研究課題/領域番号 21K06438
研究機関富山大学

研究代表者

松本 惇平  富山大学, 学術研究部医学系, 助教 (00635287)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワード幻聴 / 統合失調症 / 随伴発射 / ラット / 神経回路
研究実績の概要

「その場に存在しない他者の声が聞こえてくる」幻聴は統合失調症患者の多くが呈する特徴的な症状である。幻聴は自己の内的または外的な発話(声)を他者由来のものと誤認することが原因であると考えられているが、その神経メカニズムは未だ不明である。本研究では、ラットを用いて、幻聴に関与すると考えられている随伴発射を担う神経回路とその働きを明らかにすることを目指す。具体的には、正常ラットにおける随伴発射の神経回路を特定するとともに、統合失調症モデルラットにおける同回路の異常の有無を調べ、統合失調症の幻聴との関連を検証する。
初年度の2021年度は、まず発声に相関して活動する運動野の領域の生理学的マッピングを行い、発声時に興奮するニューロンが、尾側一次および二次運動野に多く存在することを明らかにした。さらに、これらの運動野領域と聴覚野の複数領域から、ニューロン活動と局所電場電位の同時記録を行った。
2022年度は、まず前年度に記録したデータを用いて、随伴発射に関連する可能性がある発声時の同調的な活動が運動野と聴覚野の間でみられるかを解析した。その結果、どちらの領域でも発声に対する応答は観察されたが、コヒーレンスの増加などの領域間の同調を示唆する結果は得られなかった。また、逆行性ウィルスベクターを聴覚野に投与し、運動野と聴覚野の解剖学的な結合を調べた。先行研究では運動野から聴覚野への直接結合が随伴発射に関与すると考えられていたが、この実験からは明確な直接結合が確認できなかった。
2023年度は、運動野の尾側の発声時に応答するニューロンと発声の中枢の一つである中脳の水道周囲灰白質の関係を光遺伝学と電気生理学を組み合わせて明らかにし、論文として発表した(Sharif & Matsumoto et al., eNeuro, 2024)。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

上記のように、発声に関わる運動系の解明に貢献したものの、当初想定していた運動野と聴覚野の間の解剖学的結合や機能的結合に関しては、ネガティブデータが得られた。そのため、他の神経回路の可能性の検討に時間を要している。

今後の研究の推進方策

最近代表者らが開発した、実験的な統制により優れた頭部固定下での測定系(Amara et al., 2023, 日本神経科学大会)等を用いることで、随伴発射の神経回路の特定と、統合失調症モデルラットにおける同回路の異常の有無の検証を効果的に行っていくことを目指す。

次年度使用額が生じた理由

理由:研究の遅れにより予定していた実験のいくつかを行うことができなかったため。
使用計画:本研究計画は2023年度で終了予定であったが、上記の遅れのため、2024年度まで延長手続きを行い承認された。延長期間に予定していた実験を行う。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Characterization of Ultrasonic Vocalization-Modulated Neurons in Rat Motor Cortex Based on Their Activity Modulation and Axonal Projection to the Periaqueductal Gray2024

    • 著者名/発表者名
      Sharif Aamir、Matsumoto Jumpei、Choijiljav Chinzorig、Badarch Amarbayasgalant、Setogawa Tsuyoshi、Nishijo Hisao、Nishimaru Hiroshi
    • 雑誌名

      eneuro

      巻: 11 ページ: 0452-23.2024

    • DOI

      10.1523/ENEURO.0452-23.2024

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] USV source identification for investigating neurobiology of social behavior.2023

    • 著者名/発表者名
      Jumpei Matsumoto
    • 学会等名
      The 3rd Ultrasonic Vocalization Conference
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Measurement of vocalization-induced suppression of the auditory cortex in rats using an auditory feedback experiment.2023

    • 著者名/発表者名
      Amarbayasgalant Badarch, Chinzorig Choijiljav, Jumpei Matsumoto, Tsuyoshi Setogawa, Hisao Nishijo, Hiroshi Nishimaru.
    • 学会等名
      第46回日本神経科学学会
    • 国際学会
  • [学会発表] Investigation of structural and functional difference related to ultrasonic vocalization within the motor cortex in rats.2023

    • 著者名/発表者名
      Aamir Sharif, Jumpei Matsumoto, Chinzorig Choijiljav, Tsuyoshi Setogawa, Hisao Nishijo, Hiroshi Nishimaru.
    • 学会等名
      第46回日本神経科学学会
    • 国際学会
  • [備考] 超音波コミュニケーション用の音響カメラシステムUSVCAMのソースコード

    • URL

      https://github.com/MatsumotoJ/usvcam

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公開日: 2024-12-25  

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