arx/pax6陽性を示す視床前域(prethalamus)の尾側を視床と定め、視床の最吻側にgad65陽性の視床前核(A)、その尾側にvglut2b陽性の視床中心後核(CP)とgad65陽性の視床介在核(IC)が背腹に位置することを確認した。ICの腹側にshh陽性領域が位置していることからも、ICが翼板に属することがわかった。shh陽性領域の腹側にはpax7陽性のプロソメア3基板領域があり、ゼブラフィッシュ胚に倣って後結節背側部(PTd)と名付けた。CPの背側かつ反屈束(fr)の腹側には、bhlhe23陽性で5htt陽性細胞が分布する視蓋前域脳室周囲核の交連前部(PPpc)が分布した。 ヨシノボリの雌を個体識別し、繁殖期における各個体の経時的変化を追跡した。その結果、雌は繁殖期の間に雄に威嚇される時期(威嚇相)と求愛される時期(求愛相)の2相を持つことがわかった。繁殖に参加できる雌は、体長4 cm以上だった。撮影した写真画像上で囲いを作成し、その囲いに含まれる各ピクセルのうち、輝度値(0~255)が110を超えるピクセルの含有率を明るさ率とした。胴部と尾部を合わせた明るさ率では、威嚇相と求愛相に差がみられなかったが、腹部の側面に見いだされた三角領域だけに注目すると、威嚇相群より求愛相群の方が有意に明るかった(Tukey法)。ヨシノボリの雄が雌に求愛する際の特異的な行動として、雌の傍を離れた雄が1.5秒以内に雌の傍に戻る往復行動の回数を調べた。三角領域が明るい求愛相の雌に対して、雄が1.5秒以内の往復行動を多く示す例がみられた。一方で、雌がすぐ巣に入ってしまう場合や雌が巣の傍に長く留まる場合には、三角領域が明るくても雄の往復行動が少ないことがあった。このことから、1.5秒以内の往復行動だけでは、雄が雌に求愛する積極さを評価するには不十分であると考えられた。
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