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2021 年度 実施状況報告書

嗅結節による摂食行動制御の神経メカニズムとホメオスタシス

研究課題

研究課題/領域番号 21K06440
研究機関福井大学

研究代表者

村田 航志  福井大学, 学術研究院医学系部門, 助教 (10631913)

研究分担者 眞部 寛之  同志社大学, 研究開発推進機構, 准教授 (80511386)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード神経科学 / 嗅結節 / 摂食行動 / 内分泌 / 摂食関連ホルモン / ホメオスタシス
研究実績の概要

どんなにおいしそうな匂いでも、お腹がいっぱいになると不快に感じることがある。空腹・満腹に応じて嗅覚の情動体験は変化するが、その神経メカニズムはよくわかっていない。近年の研究で、ドーパミン神経系の一部である嗅結節(olfactory tubercle)には機能ドメインが存在し、特定のドメインが匂いの誘引性および忌避性の形成に関わることが示唆された。本研究では① 嗅結節機能ドメインが摂食行動の制御に関わるか、② 機能ドメインの食べ物の匂いへの応答性が空腹-満腹間でホメオスタティックに調整を受けるか、③ 受けるとしたらどのような分子メカニズムによるかを明らかにする。オプトジェネティクスで嗅結節を領域かつ細胞種特異的に操作し、摂食行動の変化を評価する。細胞外ユニット活動記録で嗅結節ドメインの匂いの応答性を測定し、空腹・満腹状態と摂食関連ホルモンの影響を検討する。組織化学解析により、摂食関連ホルモン受容体を発現する嗅結節の神経細胞種を同定する。
本年度は当初の予定に沿って①と③に関する研究をまず実施した。①. DREADD(Designer Receptors Exclusively Activated by Designer Drugs)は特定の神経細胞集団を薬理遺伝学的に操作するシステムである。DREADDを用いて嗅結節の神経細胞群を操作することで、摂食量が変化する傾向がみられた。③. 摂食促進に作用するホルモンであるオレキシンの受容体に着目し、嗅結節における発現を調査した。DIG標識を用いた標準的なin situハイブリダイゼーション法によるオレキシン受容体mRNA検出では感度が不十分であり、嗅結節におけるオレキシン受容体発現の組織化学的な確認はできなかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

①. DREADDシステムを用いた嗅結節機能ドメインの摂食行動への関与
マウス嗅結節では前内側部のドーパミン受容体D1発現ニューロンが、餌と関連付けた匂いに対して誘引行動を示すときに活性化する。同ニューロン群の摂食行動への関与をDREADDを用いて検証した。活性化型DREADDのhM3Dqをウイルスベクターの嗅結節への局所注入によって発現させ、リガンドであるDeschloroclozapine (DCZ)をマウスに投与し、摂食量に与える影響を評価した。今回の実験では、DREADD発現が嗅結節および周囲領域におよんだため、嗅結節単独の機能は評価できないが、同操作により摂食量が増加する傾向がみられた。
③. 嗅結節におけるオレキシン受容体mRNAの発現
qPCRを用いた先行研究より嗅結節には種々の摂食関連ホルモンの受容体の遺伝子が発現することが確認されている。組織学的に遺伝子発現を評価することで、各ホルモン受容体の遺伝子を発現する嗅結節の神経細胞種の同定が可能になる。今回オレキシン受容体2種の遺伝子Hcrtr1, Hcrtr2のmRNA検出をDIG標識によるin situハイブリダイゼーション法で試みた。しかしながら検出感度が不十分なため、嗅結節においては有意なシグナルは検出されなかった。

今後の研究の推進方策

引き続き、嗅結節機能ドメインDREADD実験ならびに組織化学解析を実施する。DREADD発現を嗅結節に限局できるよう、iontophoresis によるウイルスベクターの注入を検討する。RNAscopeのような近年開発された高感度in situハイブリダイゼーション法を導入し、嗅結節における種々の摂食関連ホルモン受容体の発現を評価する。

次年度使用額が生じた理由

予備実験のために準備した生物材料および物品を用いて初年度の研究が実施できたため、次年度使用額が生じた。RNAscopeによるin situハイブリダイゼーションを導入するなど、研究を加速できるよう有効に使用する。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 1件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] Multifaceted roles of orexin neurons in mediating methamphetamine-induced changes in body temperature and heart rate2022

    • 著者名/発表者名
      Miyata Kohei、Ikoma Yoko、Murata Koshi、Kusumoto-Yoshida Ikue、Kobayashi Kenta、Kuwaki Tomoyuki、Ootsuka Youichirou
    • 雑誌名

      IBRO Neuroscience Reports

      巻: 12 ページ: 108~120

    • DOI

      10.1016/j.ibneur.2022.01.002

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Dopamine facilitates associative memory encoding in the entorhinal cortex2021

    • 著者名/発表者名
      Lee Jason Y.、Jun Heechul、Soma Shogo、Nakazono Tomoaki、Shiraiwa Kaori、Dasgupta Ananya、Nakagawa Tatsuki、Xie Jiayun L.、Chavez Jasmine、Romo Rodrigo、Yungblut Sandra、Hagihara Meiko、Murata Koshi、Igarashi Kei M.
    • 雑誌名

      Nature

      巻: 598 ページ: 321~326

    • DOI

      10.1038/s41586-021-03948-8

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Autistic-Like Behavior and Impairment of Serotonin Transporter and AMPA Receptor Trafficking in N-Ethylmaleimide Sensitive Factor Gene-Deficient Mice2021

    • 著者名/発表者名
      Xie Min-Jue、Iwata Keiko、Ishikawa Yasuyuki、Nomura Yuki、Tani Tomomi、Murata Koshi、Fukazawa Yugo、Matsuzaki Hideo
    • 雑誌名

      Frontiers in Genetics

      巻: 12 ページ: -

    • DOI

      10.3389/fgene.2021.748627

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] マウス嗅結節における食へのモチベーション形成の神経メカニズム2022

    • 著者名/発表者名
      村田 航志
    • 学会等名
      2022日本農芸化学京都大会
    • 招待講演
  • [学会発表] プロダイノルフィンならびにプレプロエンケファリンを発現するマウス嗅結節ニューロン種の同定2022

    • 著者名/発表者名
      村田航志、前川文子、黒田一樹、藤枝重治、深澤有吾
    • 学会等名
      第127回日本解剖学会総会・全国学術集会
  • [学会発表] プロダイノルフィンおよびプレプロエンケファリンを発現するマウス嗅結節ニューロンの細胞種の同定2021

    • 著者名/発表者名
      村田 航志、黒田 一樹、深澤 有吾
    • 学会等名
      第44回日本神経科学大会
  • [学会発表] 嗅皮質の腹側テニアテクタ神経細胞は、目標指向的行動において行動状態をコードする2021

    • 著者名/発表者名
      塩谷 和基、谷隅 勇太、村田 航志、廣川 純也、櫻井 芳雄、眞部 寛之
    • 学会等名
      第44回日本神経科学大会
  • [学会発表] シナプス結合における協調的前後構造の構築を支える分子メカニズムの解析2021

    • 著者名/発表者名
      深澤 有吾、エルハンバリー ルワイダ、石川 達也、村田 航志、黒田 一樹
    • 学会等名
      第44回日本神経科学大会
  • [学会発表] マウス嗅結節におけるプロダイノルフィンならびにプレプロエンケファリンを発現する細胞種の同定2021

    • 著者名/発表者名
      前川文子、村田航志、黒田一樹 、藤枝重治、深澤有吾
    • 学会等名
      2021年度 日本味と匂学会 第55回大会
  • [学会発表] 感覚運動障害を呈する新規内包出血モデルラットの確立と病態解析2021

    • 著者名/発表者名
      酒井 涼, 村田航志, 黒田一樹, 領家 崇, 深澤有吾
    • 学会等名
      第55回日本作業療法学会
  • [産業財産権] 動物用の運動訓練評価装置2021

    • 発明者名
      深澤有吾、酒井涼、黒田一樹、村田航志、領家崇、霊河秀樹
    • 権利者名
      国立大学法人福井大学
    • 産業財産権種類
      実用新案
    • 産業財産権番号
      3234861

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公開日: 2022-12-28  

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