研究実績の概要 |
抑制性のGABA作動性入力の応答にはシナプスに局在するGABAA受容体を介した一過性の応答と、シナプス外GABAA受容体を介した持続性応答がある。マウス体性感覚視床はこのシナプス外GABAA受容体サブユニットの発現が特に高い領域であることが知られる。これまでの研究から、末梢神経損傷後に体性感覚視床の視床皮質投射ニューロン(中継ニューロン)において持続性抑制電流が増加することで、視床回路のリモデリングが引き起こされることが明らかにされてきた(Nagumo et al., 2020)。一方、持続性抑制電流は視床皮質投射ニューロンの膜電位を過分極化させることで、発火パターンの変化に作用することも知られる。そこで、持続性抑制電流が視床皮質投射ニューロン活動に与える影響を調べるため、末梢神経損傷による持続性抑制電流増強が、視床皮質投射ニューロンの電気生理学的特性(膜および発火特性)に与える影響を単一ニューロンからのホールセルパッチクランプ記録と、受容体発現の組織学的解析によって進めた。 また、今年度の成果として、視床回路リモデリングの電気生理学的かつ組織形態学的な解析についての方法論についてまとめ、論文として発表した(Ueta and Miyata, STAR Protoc, 2021)。今後のシナプスリモデリングの電気生理学的および組織形態学的な解析については、当該論文でまとめた方法論に立脚して進めていく。
|