研究課題
GABA作動性入力によるシナプス後部ニューロンへの抑制は2種類あり、シナプスに局在するGABA受容体を介した一過性の電流と、シナプス外に局在するGABA受容体を介した持続性の電流を引き起こす。マウス体性感覚視床で、シナプス外GABAA受容体を介した持続性の抑制性電流の振幅は発達期に急激に上昇する。持続性抑制電流が急激に増強される時期は、マウス体性感覚視床で、脳幹に由来する上行性感覚線維とのシナプス結合の可塑的な改編が促進される臨界期と呼ばれる可塑性の非常に高まる時期と一致する。臨界期可塑性はシナプスの刈込みを促進することで、不要なシナプス除去に寄与する。マウス体性感覚視床ではシナプス刈込みを経て、弱い複数の軸索入力によるシナプスが多数形成される多重支配型のシナプス結合から、強い1本の軸索入力による強いシナプス結合が形成される一本型支配へと回路が改編される。そこで、マウス体性感覚視床ニューロンから選択的にシナプス外GABAA受容体サブユニット発現を除去するような遺伝子改変マウスを用いて視床ニューロンから持続性抑制電流をなくした。このマウスは野生型マウスに比べて視床ニューロンへ入力する軸索の数が多く残されていたことから、持続性抑制が除去されたことで発達期のシナプス刈込みの進行が阻害された可能性が示唆された。また、この視床ニューロン選択的にシナプス外GABAA受容体サブユニットを除去したマウスは感覚弁別機能が関係する行動課題の成績も低下したことから、発達期の持続性抑制電流は視床回路が構造的にも機能的にも成熟した回路を構築するために重要な役割を果たす可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
目的としていた発達期の視床シナプス改編におけるGABA作動性入力の遺伝的操作と、それに伴うシナプス改編の変化を明らかにすることができた。
論文としての形にまとめるため、研究を継続したい。
論文発表の準備に時間を要したため。
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Neuroscience and Biobehavioral Reviews
巻: 152 ページ: 105332~105332
10.1016/j.neubiorev.2023.105332