研究課題/領域番号 |
21K06447
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
木村 梨絵 東京大学, ニューロインテリジェンス国際研究機構, 特任助教 (60513455)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 神経生理 / 神経回路 / 視覚野 / 行動 / マルチユニット記録 |
研究実績の概要 |
脳は、入力された知覚情報を処理して行動出力する情報処理システムであるが、“柔軟性”の特徴を有することで、外界からの入力が多少変化してもこれまでと同様な行動を出力することができると考えられる。神経細胞がシナプスを介して結びついて、これらが複雑に組み合わさって多細胞の神経回路となり、この神経回路が多脳領野間で結びついて作り上げられる、多次元にわたる脳システムにおいて柔軟性をもつと考えられる。しかしながら、この多次元脳システムにおいて、柔軟性がどのように築き上げられ、どのように機能することで、たとえ入力が変化しても、その程度が軽微であれば、知覚情報を基にした行動を安定に維持するのかについてほとんど明らかにされていない。そこで、本研究では、知覚のうち、特に視覚に注目して、入力の変化に耐えて安定した出力をする多次元脳システムを理解することを目指す。多脳領野の多細胞から神経活動を記録することで、学習前後で、機能的にどのような神経活動をする細胞がどのように変化することで、入力の変化に対する耐性を獲得するのかを明らかにする。 令和5年度は、縦縞でレバーを押し、横縞でレバーを引くという視覚弁別課題を、頭部を固定したラットに繰り返しトレーニングして学習させた。行動実験系を改良することで、より確実に視覚弁別行動を行わせることができるようになった。さらに、広域カルシウムイメージングにて、課題遂行中の多脳領野の神経活動を記録するための準備として、頭蓋骨および硬膜を除去した後に脳表面に載せるPDMS膜(シリコンベースの有機ポリマーフィルム)を作製する条件を検討した。また、学習に使用した視覚刺激のコントラストを低下させた際の視知覚の安定性に関連すると考えられる神経活動について、高次脳領野と一次視覚野の間で双方向の相互作用が、低コントラストの刺激を提示した際に選択的に観察されることが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
頭部を固定したラットを用いた行動実験を推進することができ、また、多脳領野の神経活動を計測するための準備を進めることができたので。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き、頭部固定状態のラットを用いて、視覚弁別課題を行い、この時の神経活動を、大規模マルチユニット記録と広域カルシウムイメージングによって計測する。これによって、入力の変化に対する視覚機能の耐性を裏付ける神経基盤の理解をさらに深めることを目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
令和5年度は、行動実験系の改良などをしていて、まだ実験を軌道に乗せることはできなかったため、次年度使用額が生じた。次年度は、本研究の最終年度のため、コンスタントに実験をしていく予定で、その実験に研究費を使用する予定である。
|