研究実績の概要 |
本研究では、がん細胞内に高濃度に蓄積した銅イオンに選択的に応答して活性化するsiRNAプロドラッグを開発し、副作用の少ないがん治療薬の開発を目指している。2年目までに得られた成果として、LuciferaseおよびCyclin B1の2種類のmRNAを銅イオン依存的にノックダウン可能なsiRNAの開発に成功した。これらの研究結果を取りまとめ、査読付き英語論文として発表した (Bioorg. Med. Chem. Lett. 2024, 104, 129738)。3年目である2023年度は、前年度までに開発した銅イオン応答型siRNAを核酸医薬としてさらに発展させるため、銅イオン以外の刺激による核酸の活性化法として、糖鎖分解酵素 (β-glucuronidase) に応答する人工核酸の開発に取り組んだ。糖鎖分解酵素応答性の官能基をチミジン塩基部位に搭載したホスホロアミダイト体を化学合成し、核酸自動合成機を用いてDNA中への導入を試みた。しかしながら、DNA合成中に糖鎖分解酵素応答性官能基が脱離してしまうことが判明し、目的物を得ることができなかった。種々合成条件を検討したが、本アミダイト体導入に最適な条件を見出すことはできなかった。そこで現在はDNA合成後に糖鎖分解酵素応答性官能基を搭載するポスト合成法の確立を進めている。具体的には、DNAのリン酸ジエステル部位と反応するジアゾ基をもつ分子を設計し、中間体の合成まで成功している。
|