研究課題
本研究課題ではポンペ病の原因酵素である酸性α-glucosidase (GAA)の安定性を高める実用的なシャペロン化合物の創製を目標にしている。その指標としてPhase II段階にある1-deoxynojirimycin (DNJ)を陽性対照とし、GAAに対する親和性の強さと、幅広い変異に対応できる汎用性の2点を中心に研究を遂行した。令和3年度の成果としてDNJに対する新たな誘導体化手法としてC-5位に分岐型アルキル鎖を有する5-C-alkyl-DNJを開発し、DNJを超える高いGAA親和性をもつ5-C-heptyl-DNJの創製に成功した。令和4年度は、親化合物としてGAAに対して親和性を全く示さないL-ido-deoxynojirimycin(L-ido-DNJ)を選択し、C5位へメチル基を導入することでGAAに対してグルコース類似体のDNJに匹敵する非常に強い親和性を示す様になる事を発見しピペリジン型イミノ糖のC5位に分岐した炭素鎖を導入することが普遍的にグルコシダーゼに対する親和性を向上させるというデザイン理論の確立に成功した。令和4年度は、グルコース類似体ではなくD-フルクトース型イミノ糖の誘導体化に着目しN-4'-(p-trifluoromethylphenyl)butyl-DABの創製に成功した。ドッキング解析の結果、本化合物の芳香環部分は、これまで知られていなかった疎水性ポケットに収容され、GAAとの安定な結合形態に寄与していることが明らかになった。今後、糖認識部位以外に今回見いだした脂溶性ポケットを標的とする化合物デザインが展開されることが期待される。以上、本研究課題を通して既存のDNJに代わる新たな化合物デザインの提案に成功した。これら成果は、DNJによるシャペロン療法が無効な変異を有するポンペ病患者に対する新たな治療薬開発に繋がることが期待される。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件)
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