研究実績の概要 |
キラルビベンザインの前駆体となる 3,3'-diiodo-6,6'-dimethyl-2,2'-bis(trifluoromethansulfonyloxy)-1,1'-biphenyl の合成を行った。文献既知法でキラル 6,6'-dimethyl-2,2'-biphenol (80~99% ee) を合成後,水酸基をメトキシメチル基で保護した。これに対し,o-リチオ化による位置選択的ヨウ素化を試みた。種々条件検討の結果,TMEDA 存在下,n-BuLi を用いることで 41% 収率で所望の化合物が得られた。本反応では,副生成物としてモノヨウ素体が得られること及び,反応が完結しないことが収率の低下に繋がっている。しかしこれらはカラムで分離可能であったので,分離後,所望の化合物に対しメトキシメチル基の除去と水酸基のトリフリル化により,ビベンザイン前駆体の合成を完了した。 合成した基質 (88% ee) に対し,フラン存在下,n-BuLi を作用させると [4+2]付加環化反応が進行した生成物がジアステレオマー混合物として 80% 収率で得られた。得られたジアステレオマー混合物をボロントリフルオリドエーテル錯体で処理すると,異性化が進行しビナフトールが 34% 収率で得られた。このビナフトールの光学純度は 88% ee であったことから,生成物の光学純度を保持したまま反応が進行することが分かった。現在,ビベンザインとの双極子付加環化反応についても検討している。
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